法人が暗号資産や短期売買商品を売った場合の取扱い


今回は、法人が暗号資産や短期売買商品を売った場合の取扱いを確認してみましょう。

暗号資産や短期売買商品を売った場合

今回確認する規定は、こちら↓です。

第六十一条 内国法人が短期売買商品等(短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した資産として政令で定めるもの(有価証券を除く。)及び資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第十四項(定義)に規定する暗号資産(以下この条において「暗号資産」という。)をいう。以下この条において同じ。)の譲渡をした場合には、その譲渡に係る譲渡利益額(第一号に掲げる金額が第二号に掲げる金額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。)又は譲渡損失額(同号に掲げる金額が第一号に掲げる金額を超える場合におけるその超える部分の金額をいう。)は、第六十二条から第六十二条の五まで(合併等による資産の譲渡)の規定の適用がある場合を除き、その譲渡に係る契約をした日(その譲渡が剰余金の配当その他の財務省令で定める事由によるものである場合には、当該剰余金の配当の効力が生ずる日その他の財務省令で定める日)の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。
一 その短期売買商品等の譲渡の時における有償によるその短期売買商品等の譲渡により通常得べき対価の額
二 その短期売買商品等の譲渡に係る原価の額(その短期売買商品等についてその内国法人が選定した一単位当たりの帳簿価額の算出の方法により算出した金額(算出の方法を選定しなかつた場合又は選定した方法により算出しなかつた場合には、算出の方法のうち政令で定める方法により算出した金額)にその譲渡をした短期売買商品等の数量を乗じて計算した金額をいう。)

法人税法第61条第1項、令和7年6月20日施行

長い規定ですので、カッコ書きを省略してみましょう。

 内国法人が短期売買商品等(注1)の譲渡をした場合には、その譲渡に係る譲渡利益額(注2)又は譲渡損失額(注3)は、第六十二条から第六十二条の五まで(注4)の規定の適用がある場合を除き、その譲渡に係る契約をした日(注5)の属する事業年度の所得の金額の計算上、益金の額又は損金の額に算入する。
一 その短期売買商品等の譲渡の時における有償によるその短期売買商品等の譲渡により通常得べき対価の額
二 その短期売買商品等の譲渡に係る原価の額(注6)

法人が
・短期売買商品等
を売却した場合が、要件です。

要件を満たす場合は、

売却による
・利益(譲渡利益額)
・損失(譲渡損失額)
は、例外を除いて、

売却の契約日を含む会計期間の
・益金の額
・損金の額
に算入されます。

短期売買商品等

短期売買商品等の定義を確認してみましょう。

短期売買商品等(短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した資産として政令で定めるもの(有価証券を除く。)及び資金決済に関する法律(平成二十一年法律第五十九号)第二条第十四項(定義)に規定する暗号資産(以下この条において「暗号資産」という。)をいう。以下この条において同じ。)

2つ規定されています。

1、短期的な価格の変動を利用して利益を得る目的で取得した資産として政令で定めるもの(有価証券を除く。)

2、資金決済に関する法律第2条第14項(定義)に規定する暗号資産

短期売買商品等の短期売買商品が1で、等が2の暗号資産です。

政令(法人税法施行令)に短期売買商品について規定されています。

(短期売買商品等の範囲)
第百十八条の四 法第六十一条第一項(短期売買商品等の譲渡損益及び時価評価損益)に規定する政令で定めるものは、次に掲げる資産とする。
一 内国法人が取得した金、銀、白金その他の資産のうち、市場における短期的な価格の変動又は市場間の価格差を利用して利益を得る目的(以下この号において「短期売買目的」という。)で行う取引に専ら従事する者が短期売買目的でその取得の取引を行つたもの(以下この号において「専担者売買商品」という。)及びその取得の日において短期売買目的で取得したものである旨を財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載したもの(専担者売買商品を除く。)
二 適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配により被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人(以下この号において「被合併法人等」という。)から移転を受けた資産のうち、その移転の直前に当該被合併法人等において前号に掲げる資産とされていたもの

法人税法施行令第118条の4、令和7年4月1日施行

2つあります。

1つ目を確認してみましょう。

金、銀、白金その他の資産のうち、

1、市場における短期的な価格の変動又は市場間の価格差を利用して利益を得る目的(以下この号において「短期売買目的」という。)で行う取引に専ら従事する者が短期売買目的でその取得の取引を行つたもの(以下この号において「専担者売買商品」という。)

短期売買目的の取引の専従者が
短期売買目的で、金・銀・白金などの資産を買ったもの。
「専担者売買商品」といいます。

2、その取得の日において短期売買目的で取得したものである旨を財務省令で定めるところにより帳簿書類に記載したもの(専担者売買商品を除く。)

取得日に短期売買目的で取得した旨を一定のルールに従って帳簿書類に記載したもの。1の商品については、2から除外されます。

一定のルールについては、法人税法施行規則に規定されています。

(短期売買商品等に該当する旨の記載の方法)
第二十六条の七 令第百十八条の四第一号(短期売買商品等の範囲)の記載は、資産の取得に関する帳簿書類において、同号に規定する短期売買目的で取得した資産の勘定科目をその目的以外の目的で取得した資産の勘定科目と区分することにより行うものとする。

法人税法施行規則第26条の7、令和7年10月1日施行

資産の取得に関する帳簿書類において、
「短期売買目的で取得した資産の勘定科目」を
「短期売買目的以外の目的で取得した資産の勘定科目」と
区分することにより行うものとする。

と規定されています。

同じ金・銀・白金などであっても、目的が異なる場合は、勘定科目を分ける必要があり、勘定科目を分けていない場合は、短期売買商品等として取り扱えないため注意しましょう。

参考となる法人税基本通達
2-3-67、短期売買目的で取得したものである旨を表示したものの意義

2つ目を確認してみましょう。

適格合併、適格分割、適格現物出資又は適格現物分配により被合併法人、分割法人、現物出資法人又は現物分配法人(以下この号において「被合併法人等」という。)から移転を受けた資産のうち、その移転の直前に当該被合併法人等において前号に掲げる資産とされていたもの

A、適格合併
B、適格分割
C、適格現物出資
D、適格現物分配
により、

A、被合併法人
B、分割法人
C、現物出資法人
D、現物分配法人
「被合併法人等」から移転を受けた資産(金・銀・白金など)のうち、

移転直前に、被合併法人等において第1号の短期売買商品等とされていたものが「短期売買商品等」となります。

被合併法人等が短期売買目的として勘定科目を分けて帳簿書類に記載していたものについては、合併法人なども短期売買商品等として取り扱うことになります。

ただし、適格の組織再編成の場合に限られます。適格でない組織再編成については、上記の取扱いはありません。

暗号資産

暗号資産については、資金決済に関する法律に規定されています。

14 この法律において「暗号資産」とは、次に掲げるものをいう。ただし、金融商品取引法第二十九条の二第一項第八号に規定する権利を表示するものを除く。
一 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨、通貨建資産並びに電子決済手段(通貨建資産に該当するものを除く。)を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

資金決済に関する法律第2条第14項、令和7年6月13日施行

カッコ書きで
・本邦通貨(日本のお金)
・外国通貨(外国のお金)
・通貨建資産(銀行の預金など)
・電子決済手段(電子マネーなど)
の4つは、暗号資産から除外されています。

取扱い

取扱いをもう一度確認してみましょう。

売却による
・利益(譲渡利益額)
・損失(譲渡損失額)
は、例外を除いて、

売却の契約日を含む会計期間の
・益金の額
・損金の額
に算入されます。

・得した場合は、収益(益金算入)
・損した場合は、損失(損金算入)
となります。

他の資産の売却と異なり、「契約日」で損益を計算します。
(通常は、引渡日などが基準となります。)

契約日ではなく、引渡日を基準に損益を計算する方法については、法人税基本通達2-1-21の12(短期売買商品等の譲渡に係る損益の計上時期の特例)で公表されています。

省略
法人が当該譲渡損益の額(事業年度終了の日において未引渡しとなっている短期売買商品等に係る譲渡損益の額を除く。)をその短期売買商品等の引渡しのあった日の属する事業年度の益金の額又は損金の額に算入している場合には、これを認める。
省略

通達では引渡日の計算が認められています。

ただし、カッコ書きで

事業年度終了の日において未引渡しとなっている短期売買商品等に係る譲渡損益の額を除く。

とありますので、

例えば、
1、契約日 3月X日
2、事業年度の終了日 3月31日
3、引渡日 4月X日

の場合は、事業年度の終了日に引き渡しが済んでいないため、引渡日(通達)ではなく契約日(原則)で計算することになります。

長くなりましたので、その他の取扱いについては省略しています。

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