今回は、自己株式の取得等があった場合の資本金等の額を確認してみましょう。
規定の概要
今回確認する規定は、こちらです。
二十 法第二十四条第一項第五号から第七号までに掲げる事由(以下この号において「自己株式の取得等」という。)により金銭その他の資産を交付した場合の取得資本金額(次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額をいい、当該金額が当該自己株式の取得等により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあつては、その交付の直前の帳簿価額)の合計額を超える場合には、その超える部分の金額を減算した金額とする。)
法人税法施行令第8条第1項第20号、令和7年4月1日施行
イ 当該自己株式の取得等をした法人が一の種類の株式を発行していた法人(口数の定めがない出資を発行する法人を含む。)である場合 当該法人の当該自己株式の取得等の直前の資本金等の額を当該直前の発行済株式又は出資(自己が有する自己の株式を除く。)の総数(出資にあつては、総額)で除し、これに当該自己株式の取得等に係る株式の数(出資にあつては、金額)を乗じて計算した金額(当該直前の資本金等の額が零以下である場合には、零) ロ 当該自己株式の取得等をした法人が二以上の種類の株式を発行していた法人である場合 当該法人の当該自己株式の取得等の直前の当該自己株式の取得等に係る株式と同一の種類の株式に係る種類資本金額を当該直前の当該種類の株式(当該法人が当該直前に有していた自己の株式を除く。)の総数で除し、これに当該自己株式の取得等に係る当該種類の株式の数を乗じて計算した金額(当該直前の当該種類資本金額が零以下である場合には、零)
カッコ書きを外してみましょう。
二十 法第二十四条第一項第五号から第七号までに掲げる事由(注1)により金銭その他の資産を交付した場合の取得資本金額(注2)
イ 当該自己株式の取得等をした法人が一の種類の株式を発行していた法人(注3)である場合 当該法人の当該自己株式の取得等の直前の資本金等の額を当該直前の発行済株式又は出資(注4)の総数(注5)で除し、これに当該自己株式の取得等に係る株式の数(注6)を乗じて計算した金額(注7)
ロ 当該自己株式の取得等をした法人が二以上の種類の株式を発行していた法人である場合 当該法人の当該自己株式の取得等の直前の当該自己株式の取得等に係る株式と同一の種類の株式に係る種類資本金額を当該直前の当該種類の株式(注8)の総数で除し、これに当該自己株式の取得等に係る当該種類の株式の数を乗じて計算した金額(注9)法人税法第24条は、配当でないものを配当として取扱う規定(みなし配当)です。
・第5号、自己の株式などの取得
・第6号、出資の消却
・第7号、組織変更
上記3つの事由を「自己株式の取得等」といいます。
自己株式の取得等により、資産(例、お金)を交付した場合の「取得資本金額」が資本金等の額の減算額となります。
取得資本金額
取得資本金額(注2)のカッコ書きを確認してみましょう。
取得資本金額(次に掲げる場合の区分に応じそれぞれ次に定める金額をいい、当該金額が当該自己株式の取得等により交付した金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあつては、その交付の直前の帳簿価額)の合計額を超える場合には、その超える部分の金額を減算した金額とする。) 次に掲げる場合は、次のイとロの2つです。
イ、1つの種類の株式を発行していた法人の場合
ロ、2以上の種類の株式を発行していた法人の場合
それぞれで計算した金額(2,000)が取得資本金額となります。
ただし、カッコ書きで
計算した金額(2,000)が、自己株式の取得等により交付した
・金銭の額
・金銭以外の資産の価額
の合計額(1,500)を超える場合は、
超える部分の金額(2,000‐1,500=500)を減算します。
取得資本金額は、2,000-500=1,500に変わります。
適格現物分配の場合は、資産の時価ではなく交付直前の帳簿価額で計算します。
イの規定、種類が1つの場合
イの規定を確認してみましょう。
イ 当該自己株式の取得等をした法人が一の種類の株式を発行していた法人(注3)である場合 当該法人の当該自己株式の取得等の直前の資本金等の額を当該直前の発行済株式又は出資(注4)の総数(注5)で除し、これに当該自己株式の取得等に係る株式の数(注6)を乗じて計算した金額(注7)算式に変えます。
自己株式の取得等の直前の資本金等の額
÷発行済株式の総数×自己株式の取得等の株式数
数字を使ってみましょう。
1、資本金等の額 10,000
2、発行済株式 200株
3、1÷2=1株当たりの資本金等の額 50
4、取得資本金額 50×取得した自己の株式の数(10株)=500
交付した金銭などの合計額が700の場合、
会計上の仕訳は、
・自己株式 700 / 現預金 700
となります。
税務上の仕訳は、
・資本金等の額 500 / 現預金 700
・利益積立金額 200 /
となります。
別表5(1)利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書の記入例
(※記入方法は、他にもあります。)
1、利益積立金額の計算に関する明細書
自己株式 3欄と4欄に△200と記入します。
2、資本金等の額の計算に関する明細書
自己株式 3欄と4欄に△500と記入します。
ロの規定、種類が2以上の場合
ロの規定を確認してみましょう。
ロ 当該自己株式の取得等をした法人が二以上の種類の株式を発行していた法人である場合 当該法人の当該自己株式の取得等の直前の当該自己株式の取得等に係る株式と同一の種類の株式に係る種類資本金額を当該直前の当該種類の株式(注8)の総数で除し、これに当該自己株式の取得等に係る当該種類の株式の数を乗じて計算した金額(注9)算式に変えます。数字を使ってみましょう。
自己株式の取得等の直前の自己株式の取得等に係る株式と同一の種類の株式に係る種類資本金額÷直前の種類の株式の総数×自己株式の取得等に係る種類の株式の数
種類が2以上の場合、資本金等の額が別々に管理されます。
種類資本金額といいます。
(定義は、法人税法施行令第8条第3項)
1、種類資本金額 5,000
2、種類株式の総数 100株
3、1÷2=1株当たりの種類資本金額 50
4、取得資本金額 50×取得した自己の種類株式の数(10株)=500
参考情報
一の種類の株式を発行していた法人(注3)のカッコ書き
一の種類の株式を発行していた法人(口数の定めがない出資を発行する法人を含む。)発行済株式又は出資(注4)の総数(注5)のカッコ書き
発行済株式又は出資(自己が有する自己の株式を除く。)の総数(出資にあつては、総額)発行済株式は、自己の株式が含まれているため、自社が自己の株式を所有している場合は、除外して計算する必要があります。
株式の数(注6)のカッコ書き
株式の数(出資にあつては、金額)乗じて計算した金額(注7)のカッコ書き
乗じて計算した金額(当該直前の資本金等の額が零以下である場合には、零)資本金等の額が0以下の場合は、取得資本金額は0となります。
種類の株式(注8)のカッコ書き
種類の株式(当該法人が当該直前に有していた自己の株式を除く。)ロの種類株式の計算については、イの計算と同様です。
乗じて計算した金額(注9)のカッコ書き
乗じて計算した金額(当該直前の当該種類資本金額が零以下である場合には、零)ロの種類株式の計算については、イの計算と同様です。種類資本金額が0以下の場合は、取得資本金額は0となります。
