今回は、剰余金の配当等があった場合の利益積立金額を確認してみましょう。
剰余金の配当等があった場合
今回確認する規定は、こちらです。
八 剰余金の配当(株式又は出資に係るものに限るものとし、資本剰余金の額の減少に伴うもの並びに分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)若しくは利益の配当(分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)若しくは剰余金の分配(出資に係るものに限る。)、投資信託及び投資法人に関する法律第百三十七条(金銭の分配)の金銭の分配(法第二十三条第一項第二号に規定する出資等減少分配を除く。)又は資産の流動化に関する法律(平成十年法律第百五号)第百十五条第一項(中間配当)に規定する金銭の分配の額として株主等に交付する金銭の額及び金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあつては、その交付の直前の帳簿価額)の合計額(法第二十四条第一項の規定により法第二十三条第一項第一号又は第二号に掲げる金額とみなされる金額を除く。)
法人税法施行令第9条第8号、令和7年4月1日施行
カッコ書きを外してみましょう。
八 剰余金の配当(注1)若しくは利益の配当(注2)若しくは剰余金の分配(注3)、投資信託及び投資法人に関する法律第百三十七条(注4)の金銭の分配(注5)又は資産の流動化に関する法律(注6)第百十五条第一項(注7)に規定する金銭の分配の額として株主等に交付する金銭の額及び金銭以外の資産の価額(注8)の合計額(注9)5つ規定されています。
1、剰余金の配当
2、利益の配当
3、剰余金の分配
4、金銭の分配(投資信託及び投資法人に関する法律)
5、金銭の分配(資産の流動化に関する法律)
これらの金額として、株主等に交付する
・金銭の額(お金)
・金銭以外の資産(お金以外の資産)の価額
の合計額が、利益積立金額の減算額となります。
カッコ書き
カッコ書きが9つあります。1つずつ確認してみましょう。
剰余金の配当(株式又は出資に係るものに限るものとし、資本剰余金の額の減少に伴うもの並びに分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)剰余金の配当は、株式などに係るものに限定されます。
剰余金の配当であっても、
1、資本剰余金の額の減少による配当
2、分割型分割による配当
3、株式分配
の3つについては、別の規定が優先されるため対象から外れます。
利益の配当(分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)1、分割型分割による利益の配当
2、株式分配
の2つについては、別の規定が優先されるため対象から外れます。
剰余金の分配(出資に係るものに限る。)剰余金の配当と同じで、出資に係るものに限定されます。
金銭の分配(法第二十三条第一項第二号に規定する出資等減少分配を除く。)出資等減少分配(資本の払戻しに似たもの)については、別の規定が優先されるため対象から外れます。
金銭以外の資産の価額(適格現物分配に係る資産にあつては、その交付の直前の帳簿価額)金銭以外の資産(例、土地、建物、有価証券、車両など)の価額については、その時の価額で計算しますが、適格現物分配の要件を満たす場合は、時価ではなく直前の帳簿価額で計算します。
参考情報
合計額のカッコ書きを確認してみましょう。
合計額(法第二十四条第一項の規定により法第二十三条第一項第一号又は第二号に掲げる金額とみなされる金額を除く。)法第24条第1項は、一定の金額を剰余金の配当として取扱う規定です。みなし配当といいます。
法第23条第1項第1号と第2号を確認してみましょう。
第1号
一 剰余金の配当(株式等に係るものに限るものとし、資本剰余金の額の減少に伴うもの並びに分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)若しくは利益の配当(分割型分割によるもの及び株式分配を除く。)又は剰余金の分配(出資に係るものに限る。)の額第2号
二 投資信託及び投資法人に関する法律第百三十七条(金銭の分配)の金銭の分配(出資総額等の減少に伴う金銭の分配として財務省令で定めるもの(第二十四条第一項第四号(配当等の額とみなす金額)において「出資等減少分配」という。)を除く。)の額法第23条第1項は、受取配当金を法人税の課税対象としない特例(受取配当等の益金不算入)です。
第1号と第2号には、先ほど確認した利益積立金額の減少額の規定と同様の規定があります。
剰余金の配当であっても一定のものについては、受取配当等の益金不算入の対象から外れて、みなし配当の対象となります。
みなし配当で計算された金額は、
受取配当等の益金不算入の対象に戻ります。
計算例
1、資本剰余金の額の減少による剰余金の配当 1,000
2、資本金等の額の減少 600
3、みなし配当 1-2=400
1の1,000は、受取配当等の益金不算入の対象から外れますが、
3の400は、受取配当等の益金不算入の対象に戻ります。
このままだと、利益積立金額の減算額400が計算されるため、
みなし配当の計算を反映させないための除外規定なのでしょう。
(みなし配当が生じる場合は、別の規定で減算する仕組みです。)
