今回は、株式分配があった場合の資本金等の額を確認してみましょう。
適格要件を満たす現物分配
規定を見てみましょう。
十六 現物分配法人の適格株式分配の直前の当該適格株式分配によりその株主等に交付した法第二条第十二号の十五の二に規定する完全子法人の株式(次号において「完全子法人株式」という。)の帳簿価額に相当する金額
法人税法施行令第8条第1項第16号、令和7年4月1日施行
会社の株式を所有している場合、剰余金の配当を受けることができます。
通常は現金(お金)ですが、現金以外の資産でも可能です。現金以外の資産(不動産や株式など)を剰余金の配当により交付することを「現物分配」といいます。資産を渡す法人を「現物分配法人」といいます。
現物分配のうち、100%子法人の株式の全てが移転する等の要件を満たすものを「株式分配」といい、株式分配のうち適格要件を満たすものを「適格株式分配」といいます。
剰余金の配当
1、現金
2、現金以外の資産 → 現物分配
2-1、株式分配の要件を満たさない
2-2、株式分配の要件を満たす → 株式分配
2-2-1、適格要件を満たさない
2-2-2、適格要件を満たす → 適格株式分配
要件を満たす場合、
完全子法人株式の帳簿価額が資本金等の額の減算額となります。
仕訳イメージ
資本金等の額 ××円(簿価) / 完全子法人株式 ××円(簿価)
適格要件を満たさない現物分配
規定を見てみましょう。
十七 現物分配法人の適格株式分配に該当しない株式分配の直前の資本金等の額にイに掲げる金額のうちにロに掲げる金額の占める割合(当該直前の資本金等の額が零以下である場合には零と、当該直前の資本金等の額及びロに掲げる金額が零を超え、かつ、イに掲げる金額が零以下である場合には一とし、当該割合に小数点以下三位未満の端数があるときはこれを切り上げる。)を乗じて計算した金額(当該金額が当該株式分配により当該現物分配法人の株主等に交付した完全子法人株式その他の資産の価額を超える場合には、その超える部分の金額を減算した金額)
法人税法施行令第8条第1項第17号、令和7年4月1日施行
イ 当該株式分配を第十五号イの分割型分割とみなした場合における同号イに掲げる金額
ロ 当該現物分配法人の当該株式分配の直前の当該株式分配に係る完全子法人株式の帳簿価額(調整対象通算法人の株式にあつては、当該株式の修正帳簿価額)に相当する金額(当該金額が零以下である場合には零とし、当該金額がイに掲げる金額を超える場合(イに掲げる金額が零に満たない場合を除く。)にはイに掲げる金額とする。)
今度は、適格要件を満たさない株式分配です。
適格要件を満たさない株式分配については、第15号の分割型分割があった場合の分割法人の資本金等の額の減算額と似たような計算をします。
第15号、分割型分割があった場合の分割法人 ← 元の規定
第16号、適格株式分配があった場合の現物分配法人 ← 最初に確認した規定
第17号、非適格の株式分配があった場合の現物分配法人 ← 確認している規定
算式にしてみましょう。
資本金等の額の減算額=
株式分配の直前の資本金等の額÷イに掲げる金額(分母)×ロに掲げる金額
イ、株式分配を第15号のイの分割型分割とした場合の第15号イの金額
(前事業年度が終了する時の純資産価額に近い金額)
ロ、株式分配の完全子法人株式の帳簿価額
例えば、次の場合
・直前の資本金等の額 10,000
・イの純資産価額 20,000
・ロの完全子法人株式の帳簿価額 5,000
資本金等の額 10,000×5,000÷20,000(25%)=2,500となります。
(純資産価額の25%が減るため資本金等の額も25%減る。)
カッコ書きの取扱いは、第15号の分割型分割の取扱いとほとんど同じです。
参考情報
株式分配の定義
十二の十五の二 株式分配 現物分配(剰余金の配当又は利益の配当に限る。)のうち、その現物分配の直前において現物分配法人により発行済株式等の全部を保有されていた法人(次号において「完全子法人」という。)の当該発行済株式等の全部が移転するもの(その現物分配により当該発行済株式等の移転を受ける者がその現物分配の直前において当該現物分配法人との間に完全支配関係がある者のみである場合における当該現物分配を除く。)をいう。
法人税法第2条第12号の15の2、令和7年6月20日施行
関係図
株主等(受け取る人が現物分配法人との間に完全支配関係がある者のみでない)
↓ ↑
↓ ↑ 現物分配のうち、要件を満たすものを「株式分配」
↓ ↑
現物分配法人
↓
↓ 100%(全部が移転するもの)
↓
完全子法人
