仕入に関する消費税の積上げ計算と割戻し計算


今回は、仕入れに関する消費税について、
「積上げ計算」と「総額割戻し計算」を確認します。

内容

仕入れに関する消費税の計算は、次の3つの方法があります。

  1. 積上げ計算
  2. 帳簿積上げ計算
  3. 総額割戻し計算
積上げ計算

「インボイスに記載されている消費税額」を合計する方法です。

具体的には、売り手から受け取ったインボイス等に
記載されている消費税(10%部分)を合計した金額に
78/100(国税部分)をかけて、控除する消費税を計算します。

合計できるものは全部で6種類

  1. インボイス
  2. 簡易インボイス
  3. 電子インボイス(簡易インボイス含む)
  4. 仕入明細書方式
  5. 媒介・取次ぎ方式
  6. 帳簿保存により消費税の控除できるもの
    (インボイスが入手できないもの等)

6番だけ特殊です。インボイスがないため、
6番の合計だけ総額で割戻しをします。
割戻しの端数処理については、切り捨てか四捨五入となります。

帳簿積上げ計算

帳簿積上げ計算のポイントは、課税仕入れの都度です。

まず、課税仕入れ(税込み)×10/110(端数切捨て、四捨五入)を帳簿に記載します。1の帳簿に記載した金額を合計した後に、×78/100で消費税を計算します。

例えば、次の3つの支出があった場合
〇〇費 100(うち消費税9)→端数切捨て
××費 200(うち消費税18)→端数切捨て
◇◇費 300(うち消費税27)→端数切捨て

帳簿に記載した金額を合計した後に、78/100をかけます。
9+18+27=54×78/100=42.12

端数の切り上げはできません。
四捨五入を選択した方が消費税の控除額は多くなります。

積上げ方式の併用について

インボイスQ&Aを確認すると、積上げ計算方法(インボイスと帳簿)の併用は可能ですが、積上げ方法(併用)と総額割戻し計算の併用ができません。

参考情報
消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A
問123、仕入税額の計算方法

「なお、仕入税額の計算に当たり、請求書等積上げ計算と帳簿積上げ計算を併用することも認められますが、これらの方法と割戻し計算(下記「2」参照)を併用することは認められません(インボイス通達4-3)。

消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A
問123、仕入税額の計算方法
総額割戻し

総額割戻しは、税率別に税込み金額を合計した後に
税抜きに割り戻して消費税を計算します。

総額割戻しの計算イメージ

  1. 10%課税仕入れ(税込み)の合計×7.8/110
  2. 8%軽減課税仕入れ(税込み)の合計×6.24/108
  3. 1+2=控除する消費税

ただし、総額割戻しについては、次の場合は使用できません。

  1. 売上の消費税について積上げ計算を使用する場合
  2. 仕入の消費税の積上げ計算・帳簿積上げ計算を使用する場合
規定の読み方の確認

2023/4/30、追加しました。

総額割り戻しの規定を一部引用します。

同条第五項の規定の適用を受けない事業者は、第一項の規定にかかわらず、前項の規定の適用を受ける場合を除き、当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れのうち第一項各号に掲げるものに係る課税仕入れに係る支払対価の額を税率の異なるごとに区分して合計した金額に、

消費税法施行令、施行日令和5年10月1日

規定の内容をまとめると、

売上消費税の積上げ方式を選択しない事業者は、
(=売上の消費税の総額割戻しを選択した事業者は、)
仕入消費税の積上げ方式(第1項)に関係なく、
仕入消費税の帳簿積み上げ方式(第2項)を選択する場合を除き、

とあるため、積上げ方式(第1項の単純積上げ、第2項の帳簿積上げ)を選択すると、第3項の総額割戻しが選択できなくなります。

帳簿積上げ方式の規定については、
総額割戻し方式のように、
特例を適用するための除外要件(~を除き)がないため、
単純積上げ(1項)と帳簿積上げ(2項)が併用できる仕組みになっています。

仕入消費税の積上げ計算
1、インボイス積上げ(1項)
2、インボイス積上げ(1項)と帳簿積上げ(2項)の併用
3、帳簿積上げ(2項)

 ↑↓ 併用できません。

4、総額割戻し計算(3項)

参考規定

積上げ計算、インボイスに記載された消費税を集計する方法

(課税仕入れに係る消費税額の計算)
第四十六条 法第三十条第一項に規定する政令で定めるところにより計算した金額は、次の各号に掲げる課税仕入れ(特定課税仕入れに該当するものを除く。以下この章において同じ。)の区分に応じ当該各号に定める金額の合計額百分の七十八<78/100>を乗じて算出した金額とする。

 適格請求書(法第五十七条の四第一項に規定する適格請求書をいう。以下同じ。)の交付を受けた課税仕入れ 当該適格請求書に記載されている同項第五号に掲げる消費税額等のうち当該課税仕入れに係る部分の金額

 適格簡易請求書(法第五十七条の四第二項に規定する適格簡易請求書をいう。以下同じ。)の交付を受けた課税仕入れ 当該適格簡易請求書に記載されている同項第五号に掲げる消費税額等(当該適格簡易請求書に当該消費税額等の記載がないときは、当該消費税額等として第七十条の十に規定する方法に準じて算出した金額)のうち当該課税仕入れに係る部分の金額

 法第三十条第九項第二号に掲げる電磁的記録(同項に規定する電磁的記録をいう。以下この項、第四十九条及び第五十条において同じ。)の提供を受けた課税仕入れ 当該電磁的記録に記録されている法第五十七条の四第一項第五号又は第二項第五号に掲げる消費税額等のうち当該課税仕入れに係る部分の金額

 法第三十条第九項第三号に掲げる書類又は当該書類に記載すべき事項に係る電磁的記録を作成した課税仕入れ 当該書類に記載され、又は当該電磁的記録に記録されている第四十九条第四項第六号に掲げる消費税額等のうち当該課税仕入れに係る部分の金額

 法第三十条第九項第四号に掲げる書類の交付又は当該書類に記載すべき事項に係る電磁的記録の提供を受けた課税仕入れ 当該書類に記載され、又は当該電磁的記録に記録されている第四十九条第六項第五号に掲げる消費税額等のうち当該課税仕入れに係る部分の金額

 第四十九条第一項第一号イからニまでに掲げる課税仕入れ 課税仕入れに係る支払対価の額(法第三十条第八項第一号ニに規定する課税仕入れに係る支払対価の額をいう。以下この章において同じ。)百十分の十(当該課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、百八分の八)を乗じて算出した金額(当該金額に一円未満の端数が生じたときは、当該端数を切り捨て、又は四捨五入した後の金額)

消費税法施行令、施行日令和5年10月1日

帳簿積上げ計算

 事業者が、その課税期間に係る前項各号に掲げる課税仕入れについて、その課税仕入れの都度、課税仕入れに係る支払対価の額に百十分の十(当該課税仕入れが他の者から受けた軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、百八分の八)を乗じて算出した金額(当該金額に一円未満の端数が生じたときは、当該端数を切り捨て、又は四捨五入した後の金額)を法第三十条第七項に規定する帳簿に記載している場合には、前項の規定にかかわらず、当該金額を合計した金額に百分の七十八を乗じて算出した金額を、同条第一項に規定する課税仕入れに係る消費税額とすることができる。

消費税法施行令、施行日令和5年10月1日

総額割戻し計算(一般的に使用する方法)

3 その課税期間に係る法第四十五条第一項第二号に掲げる税率の異なるごとに区分した課税標準額に対する消費税額の計算につき、同条第五項の規定の適用を受けない事業者は、第一項の規定にかかわらず、前項の規定の適用を受ける場合を除き、当該課税期間中に国内において行つた課税仕入れのうち第一項各号に掲げるものに係る課税仕入れに係る支払対価の額を税率の異なるごとに区分して合計した金額に、課税資産の譲渡等(特定資産の譲渡等及び軽減対象課税資産の譲渡等に該当するものを除く。)に係る部分については百十分の七・八を、軽減対象課税資産の譲渡等に係る部分については百八分の六・二四をそれぞれ乗じて算出した金額の合計額を、法第三十条第一項に規定する課税仕入れに係る消費税額とすることができる。

消費税法施行令、施行日令和5年10月1日
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