令和8年度税制改正大綱_消費税の課税対象の見直し


今回は、令和8年度税制改正大綱のうち、消費税の課税対象の見直しを確認してみましょう。

消費税の課税範囲が広がる。

通信販売の方法により、
外国から日本国内に発送される1つ1万円以下の販売を
「特定少額資産の譲渡」といいます。

この特定少額資産の譲渡に、消費税がかかる予定です。

大綱の内容を見ると、消費税が既にかかっていそうな気がしますが、
「外国から」とあり、国外取引として消費税の対象から外れているのでしょう。
(原則として、資産の所在場所で消費税がかかるかどうかが判定されるため。)

国外にある資産が日本国内に発送されるということは、
輸入取引として、原則として消費税がかかります。

ただし、別の法令で、1万円以下の物品については関税と消費税が免除される仕組みになっています。少額不追及なのでしょう。
(1万円以下の物品であっても、免除されないものもあります。)

特定少額資産の譲渡に消費税をかける内容は、上記の関税と消費税が免除される制度と別のものです。
(今確認している内容は売り手の内容、関税と消費税が免除される内容は輸入取引の内容)

関係をまとめると

1、売り手
国外取引のため消費税がかからない。 → 改正後は消費税がかかる。

2、引き取る人
原則、輸入取引として消費税の課税あり
例外、消費税の課税なし(他の法令により1万円以下。少額不追及)

注意書きに

簡易課税制度における仕入税額控除の計算の基礎となる課税資産の譲渡等の範囲から「特定少額資産の譲渡」に該当するものを除外する。

とあります。現行のリバースチャージと似たような規定になるとすれば、

消費税法第37条第1項
・第1号、通常の売上げ
・第2号、リバースチャージ
が規定されているため、第3号に計算対象として追加した上で、例外(経過措置)で除外される可能性があります。

輸入の消費税を課さない特例

要件を満たす事業者を「特定少額資産販売事業者」といいます。

特定少額資産販売事業者が販売した特定少額資産(1つ1万円以下)を保税地域から引き取るときに、輸入の消費税が課されない特例が設けられる予定です。
(先ほどの内容は売り手の取扱い。今回の内容は輸入取引)

1の売り手に消費税をかけて、2の引き取る人にも消費税をかけると2重課税になるからです。

関係をまとめると

1、売り手
国外取引のため消費税がかからない。 → 改正後は消費税がかかる。

2、引き取る人
原則、消費税の課税あり → 2重課税 → 課されない措置
例外、消費税の課税なし(他の法令により1万円以下。少額不追及)

消費税の課税事業者が輸入の消費税を支払った場合は、
売上の消費税から輸入の消費税のマイナスが可能です。

特定少額資産販売事業者の制度は、登録制のため、
登録しないでそのまま輸入の消費税を支払って、消費税のマイナスが選べます。

特定少額資産販売事業者

特定少額資産販売事業者の要件は、次の2つです。

1、特定少額資産の譲渡をする課税事業者であること
2、申請をして税務署長の登録を受けること
(特定国外事業者については、消費税に関する税務代理人があること等)

1度登録を受けた場合であっても、届出書を提出すれば
特定少額資産販売事業者を止められます。

インボイス制度の登録と取消しと似た制度になると思いますので、
登録や取り消しの効果についても、改正されるのでしょう。
(15日なのか、30日なのか、別の期間となるのか。)

特定少額資産販売事業者の登録を受けた場合は、取消しの手続きをしない限り、課税事業者です。インボイス制度と同じです。

他の規定と同様に、課税事業者の2年制限や3年制限が設けられるかもしれません。

特定少額資産販売事業者が特定少額資産の譲渡をした場合は、
「仕入書等」に一定の事項を記載して

・輸入しようとする人(引き取る人)
・通関業者(輸入申告を代理する人)
に通知が必要となります。

一定の事項
・特定少額資産販売事業者の登録番号
・特定少額資産の譲渡であること

仕入書等は、特定少額資産販売事業者(売り手)に消費税がかかり、
輸入の消費税がかからないことを知らせる書類です。

そのため、仕入書等に似た書類の交付が禁止されています。インボイス制度にも同様の制度あります。

特定少額資産販売事業者の登録については、令和9年10月1日から申請ができます。

改正スケジュール
1、令和9年4月1日、物品販売プラットフォーム
 例外の計算期間、令和9年1月1日~令和9年3月31日の3月
2、令和9年10月1日、特定少額資産販売事業者の登録申請
 例外の計算期間、令和9年10月1日~令和9年12月31日の3月
3、令和10年4月1日、課税範囲の拡大と輸入の消費税を課さない特例

参考情報

関税定率法の第14条により1万円以下の物品については、関税が免除されます。

(無条件免税)
第十四条 次に掲げる貨物で輸入されるものについては、政令で定めるところにより、その関税を免除する。
十八 課税価格の合計額が一万円以下の物品(本邦の産業に対する影響その他の事情を勘案してこの号の規定を適用することを適当としない物品として政令で定めるものを除く。)

関税定率法、令和7年4月1日施行

1万円以下の物品であっても関税や消費税が免除されないものがあります。そのため、無条件免税とならないものについては、今回の改正の対象外となりそうです。

関税が免除されるものについては、輸入の消費税も免除されます。

(免税等)
第十三条 次の各号に掲げる課税物品で当該各号に規定する規定により関税が免除されるもの(関税が無税とされている物品については、当該物品に関税が課されるものとした場合にその関税が免除されるべきものを含む。第三項において同じ。)を保税地域から引き取る場合には、政令で定めるところにより、その引取りに係る消費税を免除する。
一 関税定率法第十四条第一号から第三号まで、第三号の二(国際連合又はその専門機関から寄贈された教育用又は宣伝用の物品に係る部分に限る。)、第三号の三、第四号、第六号から第十一号まで、第十三号、第十四号、第十七号又は第十八号(無条件免税)に掲げるもの(同条第十号に掲げる貨物にあつては、消費税法第七条第一項(輸出免税等)又は第八条第一項(輸出物品販売場における輸出物品の譲渡に係る免税)の規定により消費税の免除を受けたものを除く。)

輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律、令和7年6月1日施行

第十八号(無条件免税)に掲げるものが消費税の免除の対象です。
(ただし、消費税法で免税となるものは対象から外れます。)

手続きは、政令に規定されています。

(関税を免除する物品に係る内国消費税についての免税等の手続等)

第十三条 法第十三条第一項第一号若しくは第三号又は第三項第一号若しくは第三号の規定により内国消費税の免除を受けようとする者は、関税法施行令第五十九条第一項(輸入申告の手続)に規定する輸入申告書(関税法第七条の二第二項(申告の特例)に規定する特例申告(以下「特例申告」という。)に係る課税物品にあつては同条第一項に規定する特例申告書)に、その免除を受けようとする内国消費税の税目及び税率の適用が異なるごとに、当該課税物品の品名及び数量等を付記しなければならない。

輸入品に対する内国消費税の徴収等に関する法律施行令、令和7年4月1日施行

消費税の免除を受けようとする人は、輸入申告書に一定の事項を付記する必要があります。

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