今回は、移転価格税制の国外関連者を確認してみましょう。
当事者間の関係
移転価格税制の国外関連者の規定は、全部で5つあります。
(措置税特別措置法施行令第39条の12第1項)
1つ目を確認してみましょう。
第三十九条の十二 法第六十六条の四第一項に規定する政令で定める特殊の関係は、次に掲げる関係とする。
一 二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の発行済株式又は出資(自己が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額(以下第三項までにおいて「発行済株式等」という。)の百分の五十以上の数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有する関係一方の法人が
他方の法人の発行済株式等の50%以上の数の株式を
直接又は間接に保有する関係などです。
自己の株式などを除外して50%判定をしましょう。
法人相互の関係
2つ目を確認してみましょう。
二 二の法人が同一の者(当該者が個人である場合には、当該個人及びこれと法人税法第二条第十号に規定する政令で定める特殊の関係のある個人。第五号において同じ。)によつてそれぞれその発行済株式等の百分の五十以上の数又は金額の株式又は出資を直接又は間接に保有される場合における当該二の法人の関係(前号に掲げる関係に該当するものを除く。)2つの法人が
同じ人にそれぞれ(2つの法人)の
発行済株式等の50%以上の数の株式を
直接又は間接に「保有される場合」の
2つの法人の関係などです。
同一の者のカッコ書きは、個人1人ではなく、
個人1人の特殊関係にある個人(例、親族)を含めて判定する必要があります。
当該2の法人の関係のカッコ書きにより、
1つ目の当事者間の関係と2つ目の法人相互の関係が重なる場合は、
1つ目の当事者間の関係に該当します。
1つ目と2つ目は、発行済株式等の割合で判定します。
特定事実がある場合
3つ目は、発行済株式等の割合で該当しなかった場合の判定です。
三 次に掲げる事実その他これに類する事実(次号及び第五号において「特定事実」という。)が存在することにより二の法人のいずれか一方の法人が他方の法人の事業の方針の全部又は一部につき実質的に決定できる関係(前二号に掲げる関係に該当するものを除く。)
イ 当該他方の法人の役員の二分の一以上又は代表する権限を有する役員が、当該一方の法人の役員若しくは使用人を兼務している者又は当該一方の法人の役員若しくは使用人であつた者であること。
ロ 当該他方の法人がその事業活動の相当部分を当該一方の法人との取引に依存して行つていること。
ハ 当該他方の法人がその事業活動に必要とされる資金の相当部分を当該一方の法人からの借入れにより、又は当該一方の法人の保証を受けて調達していること。・イの事実
・ロの事実
・ハの事実
・イ、ロ、ハに類する事実
の4つを「特定事実」といいます。
特定事実があることにより、
2つの法人のいずれか一方の法人が
他方の法人の事業方針について実質的に決定できる関係です。
イの事実を見てみましょう。
イ 当該他方の法人の役員の二分の一以上又は代表する権限を有する役員が、当該一方の法人の役員若しくは使用人を兼務している者又は当該一方の法人の役員若しくは使用人であつた者であること。他方の法人の
・役員の1/2以上 又は
・代表する権限を有する役員
が、
一方の法人の
・役員や使用人を兼務している人 又は
・役員や使用人であった人
であること。
ロの事実
他方の法人が事業活動のほとんどを
一方の法人との取引に依存して行っていること。
ハの事実
他方の法人が事業活動に必要な資金のほとんどを一方の法人から借りていること。または、一方の法人の保証を受けて資金を調達していること。
イは人、ロは取引、ハは資金です。
株式と特定事実の組み合わせ、当事者間の関係
1つ目と2つ目は株式、3つ目は特定事実(人・取引・資金)で判定します。
4つ目は、1つ目から3つ目までの組み合わせです。
四 一の法人と次に掲げるいずれかの法人との関係(前三号に掲げる関係に該当するものを除く。)
イ 当該一の法人が、その発行済株式等の百分の五十以上の数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有し、又は特定事実が存在することによりその事業の方針の全部若しくは一部につき実質的に決定できる関係にある法人
ロ イ又はハに掲げる法人が、その発行済株式等の百分の五十以上の数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有し、又は特定事実が存在することによりその事業の方針の全部若しくは一部につき実質的に決定できる関係にある法人
ハ ロに掲げる法人が、その発行済株式等の百分の五十以上の数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有し、又は特定事実が存在することによりその事業の方針の全部若しくは一部につき実質的に決定できる関係にある法人「その発行済株式等の百分の五十以上の数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有し、又は特定事実が存在することによりその事業の方針の全部若しくは一部につき実質的に決定できる関係にある法人」の部分は、イ・ロ・ハで同じです。対象となる法人が異なります。
イの規定は、一の法人が
・50%以上支配
・特定事実あり
により、事業方針について実質的に決定できる関係です。
ロの規定は、イやハの法人が
・50%以上支配
・特定事実あり
により、事業方針について実質的に決定できる関係です。
ハの規定は、ロの法人が
・50%以上支配
・特定事実あり
により、事業方針について実質的に決定できる関係です。
・50%以上支配
・特定事実あり
のいずれかによって、
間接的に他の法人の事業方針を実質的に決定できる関係です。
株式と特定事実の組み合わせ、法人相互の関係
5つ目は、法人相互の関係です。
五 二の法人がそれぞれ次に掲げるいずれかの法人に該当する場合における当該二の法人の関係(イに規定する一の者が同一の者である場合に限るものとし、前各号に掲げる関係に該当するものを除く。)
イ 一の者が、その発行済株式等の百分の五十以上の数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有し、又は特定事実が存在することによりその事業の方針の全部若しくは一部につき実質的に決定できる関係にある法人
ロ イ又はハに掲げる法人が、その発行済株式等の百分の五十以上の数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有し、又は特定事実が存在することによりその事業の方針の全部若しくは一部につき実質的に決定できる関係にある法人
ハ ロに掲げる法人が、その発行済株式等の百分の五十以上の数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有し、又は特定事実が存在することによりその事業の方針の全部若しくは一部につき実質的に決定できる関係にある法人「当該2の法人の関係」が法人相互の関係です。
カッコ書きにより、イの「一の者」が同じ人である場合に限定されます。
「その発行済株式等の百分の五十以上の数若しくは金額の株式若しくは出資を直接若しくは間接に保有し、又は特定事実が存在することによりその事業の方針の全部若しくは一部につき実質的に決定できる関係にある法人」の部分は、イ・ロ・ハで同じです。対象となる法人が異なります。
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メモ1、第4号の当事者間の関係と第5号の法人相互の関係の比較
関係性
1、法人A→50%以上・特定事実→法人B→事業方針の決定→イの法人
2、イの法人→50%以上・特定事実→法人C→事業方針の決定→ロの法人
3、ロの法人→50%以上・特定事実→法人D→事業方針の決定→ハの法人
4、ハの法人→50%以上・特定事実→法人E→事業方針の決定→ロの法人
第4号の当事者間の関係
・法人A(一の法人)とイの法人
・法人A(一の法人)とロの法人
・法人A(一の法人)とハの法人
第5号の法人相互の関係
・イの法人とロの法人
・イの法人とハの法人
・ロの法人とハの法人
メモ2、まとめ
第1号、当事者間の関係、株式で判定
第2号、法人相互の関係、株式で判定
第3号、当事者間の関係、特定事実で判定
第4号、当事者間の関係、株式や特定事実で判定
第5号、法人相互の関係、株式や特定事実で判定
メモ3
令和8年度税制改正大綱(P100)の(1)に企業グループ間の取引に係る書類の保存の特例の創設があり、注意書き1に「関連者」は、移転価格税制における関連者と同様の基準により判定する。とあります。
国外関連者=外国法人+特殊関係(5つの規定)のため、外国法人を除外した特殊関係のある国内法人が関連者になるのかもしれません。
取引の判定は、「特定取引」に限定されています。
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