インボイス制度後に保存する書類

今回は、インボイス制度後、消費税の控除に必要な書類について確認します。

保存する書類

消費税の控除(仕入税額控除)については、法人税や所得税と異なり、原則として、支払った消費税に関する「帳簿と請求書等」の保存が必要です。帳簿「と」請求書等の両方の保存が必要となります。

帳簿の記載事項

帳簿とは、仕訳帳や総勘定元帳などです。
帳簿に、次の事項を記載する必要があります。
実務上は、会計ソフトの仕訳として入力することがほとんどです。

  1. 課税仕入れの相手方(売り手)の名称
  2. 課税仕入れの年月日
  3. 課税仕入れの内容
  4. 課税仕入れの支払金額(税込金額)

帳簿には、誰から、いつ、何を、いくらでの4つを記載します。
帳簿については、インボイス制度による変更点はありません。

保存が必要な請求書等(インボイスなど)

インボイス制度後、仕入税額控除が認められる請求書は次の5つです。
5つの書類と登録番号を確認しましょう。

  1. インボイス・簡易インボイス
  2. 電子データ(インボイス・電子インボイス)
  3. 仕入明細書、仕入計算書のうち一定のもの
  4. 媒介・取次に関する請求書などで一定のもの
  5. 輸入許可書で一定のもの

5番の輸入許可書については、インボイス制度は関係ありません。仕入税額控除のためには、原則として請求書等(紙、データ)が必要となりますので、会計処理をする際は、請求書等の有無を確認しましょう。

請求書等(インボイスなど)がある。 → 仕入税額控除〇
請求書等(インボイスなど)がない。 → 原則として仕入税額控除×

請求書等がなくても消費税の控除ができる場合

原則として、帳簿と請求書等の保存が必要ですが、一定の場合には帳簿のみの保存が認められます。請求書等(インボイスなど)が受け取れない場合です。この場合は、インボイスがないことを証明するために、一定の事項(相手方の住所など)を帳簿に記載します。

帳簿の保存のみで消費税の控除ができる場合(令49、1項1号)は、
次の4つです。

  1. インボイスの交付が免除されているもの(イ)
    フェリー、バス、電車(税込3万円未満
  2. 簡易インボイスで回収されるもの(ロ)
    入場券など
  3. 次の業者が棚卸資産(消耗品を除く)として取得するもの(ハ)
    1、古物商
    2、質屋
    3、宅地建物取引業
    4、リサイクル業
  4. その他一定のもの(令49①一ニ、規15条の4)
    1、自販機(税込3万円未満)、郵便ポスト(規26の6)
    2、出張旅費関係
    3、通勤手当関係

1については、売り手のインボイス発行義務が免除されているため、
インボイスの保存が困難です、

2については、簡易インボイスが手許に残らないため、
インボイスの保存が困難です。

3については、インボイス発行事業者からの買取りと、インボイス発行事業者以外の者からの買取りで、仕入金額に差が生じるため、実務を考慮してインボイスの保存を不要としています。

4については、売り手のインボイスが交付が困難な取引であるため、実務を考慮してインボイスの保存を不要としています。

まとめ

インボイス制度後の請求書等の確認手順です。

1、請求書等(インボイスなど)がある。→仕入税額控除〇
 ↓
2、請求書等(インボイスなど)がない。
 例外については、請求書等がなくても仕入税額控除〇
 上記例外でもなく、請求書等がない場合は仕入税額控除×
 ↓
3、経過措置(80%控除)の検討
 A、区分記載請求書等(インボイスでない)がある→経過措置〇
 B、区分記載請求書等(インボイスでない)がない→仕入税額控除×

参考規定

7 第一項の規定は、事業者が当該課税期間の課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿及び請求書等(請求書等の交付を受けることが困難である場合、特定課税仕入れに係るものである場合その他の政令で定める場合における当該課税仕入れ等の税額については、帳簿)を保存しない場合には、当該保存がない課税仕入れ、特定課税仕入れ又は課税貨物に係る課税仕入れ等の税額については、適用しない。ただし、災害その他やむを得ない事情により、当該保存をすることができなかつたことを当該事業者において証明した場合は、この限りでない。

9 第七項に規定する請求書等とは、次に掲げる書類及び電磁的記録(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律第二条第三号(定義)に規定する電磁的記録をいう。第二号において同じ。)をいう。

一 事業者に対し課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。次号及び第三号において同じ。)を行う他の事業者(適格請求書発行事業者に限る。次号及び第三号において同じ。)が、当該課税資産の譲渡等につき当該事業者に交付する適格請求書又は適格簡易請求書

二 事業者に対し課税資産の譲渡等を行う他の事業者が、第五十七条の四第五項の規定により当該課税資産の譲渡等につき当該事業者に交付すべき適格請求書又は適格簡易請求書に代えて提供する電磁的記録

三 事業者がその行つた課税仕入れ(他の事業者が行う課税資産の譲渡等に該当するものに限るものとし、当該課税資産の譲渡等のうち、第五十七条の四第一項ただし書又は第五十七条の六第一項本文の規定の適用を受けるものを除く。)につき作成する仕入明細書、仕入計算書その他これらに類する書類で課税仕入れの相手方の氏名又は名称その他の政令で定める事項が記載されているもの(当該書類に記載されている事項につき、当該課税仕入れの相手方の確認を受けたものに限る。)

四 事業者がその行つた課税仕入れ(卸売市場においてせり売又は入札の方法により行われるものその他の媒介又は取次ぎに係る業務を行う者を介して行われる課税仕入れとして政令で定めるものに限る。)につき当該媒介又は取次ぎに係る業務を行う者から交付を受ける請求書、納品書その他これらに類する書類で政令で定める事項が記載されているもの

五 課税貨物を保税地域から引き取る事業者が税関長から交付を受ける当該課税貨物の輸入の許可(関税法第六十七条(輸出又は輸入の許可)に規定する輸入の許可をいう。)があつたことを証する書類その他の政令で定める書類で次に掲げる事項が記載されているもの
イ 納税地を所轄する税関長
ロ 課税貨物を保税地域から引き取ることができることとなつた年月日(課税貨物につき特例申告書を提出した場合には、保税地域から引き取ることができることとなつた年月日及び特例申告書を提出した日又は特例申告に関する決定の通知を受けた日)
ハ 課税貨物の内容
ニ 課税貨物に係る消費税の課税標準である金額並びに引取りに係る消費税額及び地方消費税額
ホ 書類の交付を受ける事業者の氏名又は名称

消費税法第30条、施行日令和5年10月1日

(課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の記載事項等)
第四十九条 法第三十条第七項に規定する政令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 課税仕入れが次に掲げる課税仕入れに該当する場合(法第三十条第七項に規定する帳簿に次に掲げる課税仕入れのいずれかに該当する旨及び当該課税仕入れの相手方の住所又は所在地(国税庁長官が指定する者に係るものを除く。)を記載している場合に限る。)

イ 他の者から受けた第七十条の九第二項第一号に掲げる課税資産の譲渡等に係る課税仕入れ

ロ 入場券その他の課税仕入れに係る書類のうち法第五十七条の四第二項各号(第二号を除く。)に掲げる事項が記載されているものが、当該課税仕入れに係る課税資産の譲渡等を受けた際に当該課税資産の譲渡等を行う適格請求書発行事業者により回収された課税仕入れ(イに掲げる課税仕入れを除く。)

ハ 課税仕入れに係る資産が次に掲げる資産のいずれかに該当する場合における当該課税仕入れ(当該資産が棚卸資産(消耗品を除く。)に該当する場合に限る。)
(1) 古物営業法(昭和二十四年法律第百八号)第二条第二項(定義)に規定する古物営業を営む同条第三項に規定する古物商である事業者が、他の者(適格請求書発行事業者を除く。ハにおいて同じ。)から買い受けた同条第一項に規定する古物(これに準ずるものとして財務省令で定めるものを含む。)
(2) 質屋営業法(昭和二十五年法律第百五十八号)第一条第一項(定義)に規定する質屋営業を営む同条第二項に規定する質屋である事業者が、同法第十八条第一項(流質物の取得及び処分)の規定により他の者から所有権を取得した質物
(3) 宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)第二条第二号(用語の定義)に規定する宅地建物取引業を営む同条第三号に規定する宅地建物取引業者である事業者が、他の者から買い受けた同条第二号に規定する建物
(4) 再生資源卸売業その他不特定かつ多数の者から再生資源等(資源の有効な利用の促進に関する法律(平成三年法律第四十八号)第二条第四項(定義)に規定する再生資源及び同条第五項に規定する再生部品をいう。)に係る課税仕入れを行う事業を営む事業者が、他の者から買い受けた当該再生資源等
ニ イからハまでに掲げるもののほか、請求書等(法第三十条第七項に規定する請求書等をいう。)の交付又は提供を受けることが困難な課税仕入れとして財務省令で定めるもの

二 特定課税仕入れに係るものである場合

消費税法施行令、施行日令和5年10月1日
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