今回は、リバースチャージに関する売上げの定義を確認します。
仕入れに関する定義はこちら。
リバースチャージに関する定義
リバースチャージは、買い手が売り手に代わって
申告と納税をする仕組みです。
このリバースチャージ制度によって、
新しい定義が規定されています。
- 特定資産の譲渡等(2条1項、8の2)
- 電気通信利用役務の提供(2条1項、8の3)
- 事業者向け電気通信利用役務の提供(2条1項、8の4)
- 特定役務の提供(2条1項、8の5)
- 特定仕入れ(4条、課税の対象)
- 特定課税仕入れ(5条、納税義務者)
「特定仕入れ」に対して、消費税をかけて、
「特定課税仕入れ」に対して、納税義務を課しています。
今回は、上記の下線4つを確認します。
特定資産の譲渡等
消費税の課税対象となる特定仕入れの定義で、「特定資産の譲渡等」が出てきます。
(課税の対象)
消費税法
第四条 国内において事業者が行つた資産の譲渡等(特定資産の譲渡等に該当するものを除く。第三項において同じ。)及び特定仕入れ(事業として他の者から受けた特定資産の譲渡等をいう。以下この章において同じ。)には、この法律により、消費税を課する。
八の二 特定資産の譲渡等
消費税法2条1項
事業者向け電気通信利用役務の提供及び特定役務の提供をいう。
売り手が特定資産の譲渡等を行った場合に、買い手の特定仕入れ(事業、他の者、特定資産の譲渡等の3つ)に対し、消費税がかかります。
特定資産の譲渡等は次の2つです。
・事業者向け電気通信利用役務の提供
・特定役務の提供
上記2つについても定義されています。
電気通信利用役務の提供
「事業者向け電気通信利用役務の提供」の前に、
「電気通信利用役務の提供」が定義されています。
八の三 電気通信利用役務の提供
消費税法2条1項
資産の譲渡等のうち、電気通信回線を介して行われる著作物(著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第一号(定義)に規定する著作物をいう。)の提供(当該著作物の利用の許諾に係る取引を含む。)その他の電気通信回線を介して行われる役務の提供(電話、電信その他の通信設備を用いて他人の通信を媒介する役務の提供を除く。)であつて、他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のものをいう。
「その他の」の前は例示ですので置いておきます。
ポイントは次の2つです。
1、電気通信回線を介して行われる役務の提供(一定のものを除く)
2、他の資産の譲渡等の結果の通知その他の他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供以外のもの
2を見ていくと、「その他の」の前は例示ですので置いておきます。
「他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供」以外のものとあります。
他の資産の譲渡等に付随して行われる役務の提供は、
電気通信利用役務の提供に該当しません。
他の資産の譲渡等(A)に付随して行われるサービスの提供(A´)は、
電気通信回線を介して行われるサービスの提供であっても、
電気通信利用役務の提供に該当しません。
電気通信回線を介して行われるサービスの提供については、
「通信設備を用いて他人の通信を媒介するサービスの提供」を除きます。
わかりにくいので、Q&Aを確認するとありました。
○ 電話、FAX、電報、データ伝送、インターネット回線の利用など、他者間の情報の伝達を単に媒介するもの(いわゆる通信)
国境を越えた役務の提供に係る消費税の課税に関するQ&A、PDF12ページ
https://www.nta.go.jp/publication/pamph/pdf/cross-QA.pdf
まとめると、電気通信利用役務の提供は、次の3つを満たすものです。
1、資産の譲渡等に該当する。
2、電気通信回線を利用するサービスの提供(通信を除く)。
3、3のサービスが主たる取引であること。
電気通信利用役務の提供の例については、消費税法基本通達5-8-3(電気通信利用役務の提供)に記載されています。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/05/08.htm
事業者向け電気通信利用役務の提供
「事業者向け電気通信利用役務の提供」の定義中に、「国外事業者」が出てきますので国外事業者の定義を確認します。
四の二 国外事業者
消費税法2条1項
所得税法(昭和四十年法律第三十三号)第二条第一項第五号(定義)に規定する非居住者である個人事業者及び法人税法(昭和四十年法律第三十四号)第二条第四号(定義)に規定する外国法人をいう。
・所得税法に規定する非居住者である個人事業者
・法人税法に規定する外国法人
の2つが国外事業者です。
八の四 事業者向け電気通信利用役務の提供
消費税法2条1項
国外事業者が行う電気通信利用役務の提供のうち、当該電気通信利用役務の提供に係る役務の性質又は当該役務の提供に係る取引条件等から当該役務の提供を受ける者が通常事業者に限られるものをいう。
事業者向け電気通信利用役務の提供の例については、消費税法基本通達5-8-4(事業者向け電気通信利用役務の提供)に記載されています。
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/05/08.htm
通達の(注)で、電子書籍、音楽配信、ソフトウェア、ゲームを利用させるサービスの提供については、消費者からの申し込みが事実上制限できないものについては、事業者向けに該当しないことが公表されています。
事業者向け電気通信利用役務の提供は、明らかに事業者向け(通常消費者がサービスを受けないもの)である必要があります。
特定役務の提供
特定役務の提供は、上記の電気通信利用役務の提供とは関係ありません。仮に特定役務の提供に該当するような電気通信利用役務の提供については、電気通信利用役務の提供の規定が優先されます。
定義を確認します。
八の五 特定役務の提供
消費税法2条1項
資産の譲渡等のうち、国外事業者が行う演劇その他の政令で定める役務の提供(電気通信利用役務の提供に該当するものを除く。)をいう。
(特定役務の提供の範囲)
消費税法施行令
第二条の二 法第二条第一項第八号の五に規定する政令で定める役務の提供は、映画若しくは演劇の俳優、音楽家その他の芸能人又は職業運動家の役務の提供を主たる内容とする事業として行う役務の提供のうち、国外事業者が他の事業者に対して行う役務の提供(当該国外事業者が不特定かつ多数の者に対して行う役務の提供を除く。)とする。
特定役務とは、芸能人やスポーツ選手の仕事のことです。プロ、アマチュアを問いません。スポーツ選手以外にも、騎手、レーサー、囲碁、チェス等の競技者等も含みます(消費税法基本通達5-8-5、職業運動家の範囲)。
国外事業者の特定役務の提供から、
「不特定かつ多数の者に対するサービスの提供」は除かれます。
場合分けします。
1、不特定多数は、特定役務の提供から除きます。
仮に事業者がいたとしても、特定役務の提供に該当しません。
事業者を特定するのが難しいからです。
2、不特定少数は、特定役務の提供から除かれません。
少数で特定できるため、事業者がいる場合は特定役務の提供に該当します。
全員消費者であれば特定役務の提供には該当しません。
3、特定多数、特定少数は、特定役務の提供から除かれません。
事業者が特定できているため、特定役務の提供に該当します。
参考通達
消基5-8-3(電気通信利用役務の提供)
消基5-8-4(事業者向け電気通信利用役務の提供)
消基5-8-5(職業運動家の範囲)
消基5-8-6(特定役務の提供から除かれるもの)
消基5-8-7(特定役務の提供を行う者の仲介等)
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shohi/05/08.htm