インボイス発行事業者が亡くなった場合の手続き


今回は、インボイス発行事業者が亡くなった場合の
手続きを確認してみましょう。

相続人の手続き

インボイス発行事業者が亡くなった場合については、原則の手続きに関係なく、相続人がその旨の届出書を速やかに提出する必要があります。

原則の手続きを確認します。

(小規模事業者の納税義務の免除が適用されなくなつた場合等の届出)
第五十七条 事業者が次の各号に掲げる場合に該当することとなつた場合には、当該各号に定める者は、その旨を記載した届出書を速やかに当該事業者の納税地を所轄する税務署長に提出しなければならない。

 個人事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される者を除く。)が死亡した場合 当該死亡した個人事業者の相続人

消費税法

死亡した個人事業者(被相続人)の相続人と規定されているため、事業の承継の有無は関係ありません。誰も事業を承継しないというケースはあまりないと思いますが、誰も事業を承継できないケースはあるでしょう。

例外の手続きを確認します。

(適格請求書発行事業者が死亡した場合における手続等)
第五十七条の三 適格請求書発行事業者(個人事業者に限る。以下この条において同じ。)が死亡した場合には、第五十七条第一項の規定にかかわらず、同項第四号に定める者は、同号に掲げる場合に該当することとなつた旨を記載した届出書を、速やかに、当該適格請求書発行事業者の納税地を所轄する税務署長に提出しなければならない。

消費税法

57条の対象者は個人事業者(課税事業者に限る)、
57条の3の対象者は個人事業者(インボイス発行事業者に限る)の違い
があります。
(規定上、重複するため57条1項の規定にかかわらず、とあります。)

インボイス発行事業者でない場合の相続と、
インボイス発行事業者である場合の相続では、
インボイスの登録手続きが異なるため、規定を分けています。

例外の届出書は現時点で公表されていません。
(参考)個人事業者の死亡届出書(57条1項4号)
https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shohi/annai/pdf/1461_07.pdf

届出書のひな型が変わるか、別の届出書が公表されるのでしょうね。

被相続人のインボイス登録の効力の失効(原則)

被相続人のインボイス登録は、例外を除き、
1、インボイス発行事業者の死亡届出書が提出された日の翌日
2、死亡した日の翌日から4月を経過した日(準確定申告の期限の翌日)
1か2、いずれか早い日に効力が消えます。

死亡と同時に自動的に効力は失効しません。
失効させるためには、取りやめの届出書を提出する必要があります。
そうすると、提出もれが起きるため、準確定申告の期限をもって、
自動的に効力が消滅する仕組みです。

親        死亡
|---------×
          ↓ 親の番号はそのまま残る(2項)
子         ↓
|--------------|

 適格請求書発行事業者が死亡した場合における前条第一項の登録は、次項の規定の適用を受ける場合を除き、前項の規定による届出書が提出された日の翌日又は当該死亡した日の翌日から四月を経過した日のいずれか早い日に、その効力を失う。

消費税法57条の3

次項(3項)の規定の適用を受ける場合を除き、とあるので
例外を確認します。

みなし登録期間(例外)

インボイスの登録については、個人事業者が自ら行う仕組みですが、被相続人の事業を承継した場合については、相続人が事前にインボイスの登録を受けることができません。この問題を解消するための規定がみなし登録です。

対象者は、相続によりインボイス発行事業者(被相続人)の事業を承継した相続人で、インボイス発行事業者でないものです。

相続人については、
1、相続翌日から、相続人自らがインボイスの登録を受けた日の前日
2、被相続人が死亡した日の翌日から4月を経過する日(準確定申告の期限)
1か2、いずれか早い日までの期間を
インボイスの登録を受けているものとして取り扱われます。

ただし、相続人自らがインボイスの登録を取りやめた場合は、取りやめが優先されます。相続人が取りやめない限り、自動的にインボイスの登録期間が継続します。みなし登録期間中については、被相続人の登録番号が相続人の登録番号として取り扱われます。勝手に番号を変更できず、変更したとしても無効になります。

親        死亡
|---------×
          ↓ 親の番号はそのまま残る(2項)
          ↓  → 番号がない子が事業を承継した場合は
子         ↓  → 子が親の番号を承継する(3項)
|--------------|

インボイス発行事業者本人が取りやめる場合の規定

10 適格請求書発行事業者が、次の各号に掲げる場合に該当することとなつた場合には、当該各号に定める日に、第一項の登録は、その効力を失う。
一 当該適格請求書発行事業者が第一項の登録の取消しを求める旨の届出書をその納税地を所轄する税務署長に提出した場合 その提出があつた日の属する課税期間の末日の翌日(その提出が、当該課税期間の末日から起算して三十日前の日から当該課税期間の末日までの間にされた場合には、当該課税期間の翌課税期間の末日の翌日)

消費税法57条の2

みなし登録期間に関する規定

 相続により適格請求書発行事業者の事業を承継した相続人適格請求書発行事業者を除く。の当該相続のあつた日の翌日から、当該相続人が前条第一項の登録を受けた日の前日又は当該相続に係る適格請求書発行事業者が死亡した日の翌日から四月を経過する日のいずれか早い日までの期間(次項において「みなし登録期間」という。)については、当該相続人を同条第一項の登録を受けた事業者とみなして、この法律(同条第十項(第一号に係る部分に限る。)を除く。)の規定を適用する。この場合において、当該みなし登録期間中は、当該適格請求書発行事業者に係る同条第四項の登録番号を当該相続人の登録番号とみなす。

消費税法57条の3

→ 相続人は登録番号を持っていないことが前提。

被相続人のインボイス登録の効力の失効(例外)

みなし登録の特例を適用した相続人の被相続人のインボイス登録については、
相続人のみなし登録期間の末日の翌日以後に効力が消えます。

親        死亡
|---------×
          ↓ 親の番号はそのまま残る(2項)
          ↓  番号がない子が事業を承継した場合は
          ↓  子が親の番号を承継する(3項)
          ↓  みなし登録期間中は有効。
子         ↓  みなし期間が過ぎれば番号が失効。
|--------------|

例えば、

  1. インボイスの登録を受けている個人事業者(被相続人)が死亡した。
  2. インボイスの登録を受けていない相続人が1の事業を相続した。
  3. 準確定申告期限まで自動的にみなし登録期間が発生する。
  4. 準確定申告期限前の10月10日、相続人がインボイスの登録を受けた場合

登録を受けた日の前日(10月9日=みなし登録期間の末日)までは被相続人の登録番号が有効です。登録を受けた日(10月10日=みなし登録期間の末日の翌日)に被相続人の登録番号が失効し、登録を受けた日(10月10日)からは相続人の番号が有効となります。

 前項の規定の適用を受けた相続人の被相続人に係る前条第一項の登録は、当該相続人のみなし登録期間の末日の翌日以後は、その効力を失う。

消費税法57条の3
その他の規定

 適格請求書発行事業者の事業を承継した場合における棚卸資産に係る消費税額の調整その他この条の規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。

消費税法57条の3
まとめ

被相続人と相続人、手続きの原則と例外をまとめています。

被相続人相続人届出原則
被相続人の
番号の効力
(消法57条の3、2項)
例外
みなし登録期間と被相続人の
登録番号
(消法57条の3、3項)
例外
被相続人の
番号の効力
(消法57条の3、4項)
発行事業者発行事業者相続人提出
(消法57条の3、1項、新設規定)
相続人提出日の翌日に失効する。
(準確期限あり)

(子の番号があるため)

(子の番号があるため)
発行事業者発行事業者以外同上同上相続翌日~相続人登録日前日がみなし登録期間。この期間中は被相続人の番号使用する。
(準確期限あり)
相続人登録日以後、被相続人の登録番号は失効する。登録日以後は相続人の登録番号を使用する。
発行事業者以外発行事業者相続人提出
(消法57条1項)
元からあった規定
発行事業者以外発行事業者以外同上
まとめ
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