帳簿の保存のみで消費税の控除ができる場合


今回は、帳簿の保存のみで消費税の控除ができる場合を確認してみましょう。

概要

支払った消費税の控除については、
一定の要件を満たす帳簿と請求書等の保存が必要です。

ただし、インボイスの入手が困難である場合など、
一定の場合には帳簿の保存のみで消費税の控除が可能です。

一定の場合については、
消費税法施行令49条(下記1~3)に規定されています。

規定の概略

  • インボイスの入手が困難である場合
    (国税庁長官指定者を除く)
  • 不特定かつ多数の取引で一定のもの
  • 媒介者・取次者等の場合
  • 買い手が作成する仕入明細書等の記載事項
  • 卸売市場等の場合
  • 媒介者・取次者が作成する請求書等の記載事項
  • 法30条9項3号(仕入明細書等)と4号(媒介者等作成の請求書等)の書類には、データを含む。

今回は1~3を確認します。
1~3が帳簿の記載事項、4~7が請求書等の記載事項です。

インボイスの入手が困難である場合

帳簿の保存のみで消費税の控除ができる場合(消費税法施行令49条1項1号)は、次の4つです。帳簿には、下記例外に該当する旨と相手方の住所や所在地(国税庁長官指定者を除く)を記載する必要があります。

  1. インボイスの交付が免除されているもの(イ)
    フェリー、バス、電車(税込3万円未満
  2. 簡易インボイスで回収されるもの(ロ)
    入場券など
  3. 次の業者が棚卸資産(消耗品除く)として取得するもの(ハ)
    1、古物商
    2、質屋
    3、宅地建物取引業
    4、リサイクル業
  4. その他一定のもの(消費税法施行令49条1項1号ニ、規15条の4)
    1、自販機(税込3万円未満)、郵便ポスト(規26の6)
    2、出張旅費関係
    3、通勤手当関係

1については、
売り手のインボイス発行義務が免除されているため、
インボイスの保存は不要です。

2については、
簡易インボイスが手許に残らないため、
インボイスの保存は不要です。

3については、
・インボイス発行事業者からの買取り(消費税控除あり)と、
・インボイス発行事業者以外の者からの買取り(消費税控除なし)で、
仕入金額に差が生じるため、
実務を考慮してインボイスの保存を不要としています。

4については、売り手のインボイスの交付が困難な取引であるため、
実務を考慮してインボイスの保存を不要としています。

(課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の記載事項等)
第四十九条 法第三十条第七項に規定する政令で定める場合は、次に掲げる場合とする。
一 課税仕入れが次に掲げる課税仕入れに該当する場合(法第三十条第七項に規定する帳簿に次に掲げる課税仕入れのいずれかに該当する旨及び当該課税仕入れの相手方の住所又は所在地(国税庁長官が指定する者に係るものを除く。)を記載している場合に限る。)

イ 他の者から受けた第七十条の九第二項第一号に掲げる課税資産の譲渡等に係る課税仕入れ

ロ 入場券その他の課税仕入れに係る書類のうち法第五十七条の四第二項各号(第二号を除く。)に掲げる事項が記載されているものが、当該課税仕入れに係る課税資産の譲渡等を受けた際に当該課税資産の譲渡等を行う適格請求書発行事業者により回収された課税仕入れ(イに掲げる課税仕入れを除く。)

ハ 課税仕入れに係る資産が次に掲げる資産のいずれかに該当する場合における当該課税仕入れ(当該資産が棚卸資産(消耗品を除く。)に該当する場合に限る。)
(1) 古物営業法(昭和二十四年法律第百八号)第二条第二項(定義)に規定する古物営業を営む同条第三項に規定する古物商である事業者が、他の者(適格請求書発行事業者を除く。ハにおいて同じ。)から買い受けた同条第一項に規定する古物(これに準ずるものとして財務省令で定めるものを含む。)
(2) 質屋営業法(昭和二十五年法律第百五十八号)第一条第一項(定義)に規定する質屋営業を営む同条第二項に規定する質屋である事業者が、同法第十八条第一項(流質物の取得及び処分)の規定により他の者から所有権を取得した質物
(3) 宅地建物取引業法(昭和二十七年法律第百七十六号)第二条第二号(用語の定義)に規定する宅地建物取引業を営む同条第三号に規定する宅地建物取引業者である事業者が、他の者から買い受けた同条第二号に規定する建物
(4) 再生資源卸売業その他不特定かつ多数の者から再生資源等(資源の有効な利用の促進に関する法律(平成三年法律第四十八号)第二条第四項(定義)に規定する再生資源及び同条第五項に規定する再生部品をいう。)に係る課税仕入れを行う事業を営む事業者が、他の者から買い受けた当該再生資源等

ニ イからハまでに掲げるもののほか、請求書等(法第三十条第七項に規定する請求書等をいう。)の交付又は提供を受けることが困難な課税仕入れとして財務省令で定めるもの

二 特定課税仕入れに係るものである場合

消費税法施行令49条1項1号、施行日令和5年10月1日
住所や所在地の記載が不要となる場合(国税庁長官指定者)

売り手の住所や所在地の記載が不要となる者は、次の4者です。

1、売り手のインボイスの交付が免除されている
 旅客の運送サービスをした事業者

2、郵便、運送サービスをした事業者

3、出張手当等、通勤手当等を利用した従業員など

4、古物商、質屋、宅地建物取引業、リサイクル業
古物商、質屋、宅地建物取引業の課税仕入れについては、
各業法により記載する必要があるものは住所や所在地の記載が必要です。
各業法により記載する必要がないものに限り、
売り手の住所や所在地の記載が不要となります。

リサイクル業については、
消費者(事業者以外の者)からの課税仕入れについてのみ、
売り手住所や所在地の記載が不要となります。

参考通達

4-7
令第49条第1項第1号《課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の記載事項等》に規定する「国税庁長官が指定する者」は次による。

(1) 令第70条の9第2項第1号イからニまで《適格請求書の交付を免除する課税資産の譲渡等の範囲等》に掲げる旅客の運送に係る役務の提供を受けた場合の当該役務の提供を行った者

(2) 規則第26条の6第2号《適格請求書等の交付が困難な課税資産の譲渡等》に規定する郵便の役務及び貨物の運送に係る役務の提供を受けた場合の当該役務の提供を行った者

(3) 規則第15条の4第2号《請求書等の交付を受けることが困難な課税仕入れ》に規定する「その旅行に必要な支出に充てるために事業者がその使用人等又はその退職者等に対して支給する金品」及び同条第3号に規定する「通勤手当」に該当するもののうち、通常必要であると認められる部分に係る課税仕入れを行った場合の当該課税仕入れに係る同条第2号に規定する使用人等又は同号に規定する退職者等及び同条第3号に規定する通勤者

(4) 令第49条第1項第1号ハ(1)から(4)まで《課税仕入れ等の税額の控除に係る帳簿等の記載事項等》に掲げる資産に係る課税仕入れ(同号ハ(1)から(3)までに掲げる資産に係る課税仕入れについては、古物営業法、質屋営業法又は宅地建物取引業法により、これらの業務に関する帳簿等へ相手方の氏名及び住所を記載することとされているもの以外のものに限り、同号ハ(4)に掲げる資産に係る課税仕入れについては、事業者以外の者から受けるものに限る。)を行った場合の当該課税仕入れの相手方

消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関する取扱通達の制定について(法令解釈通達)、施行日令和5年10月1日

2023/8/27、追加
国税庁告示、消費税法施行令第四十九条第一項第一号に規定する国税庁長官が指定する者を定める件
https://www.nta.go.jp/law/kokuji/r0508/01.htm

上記通達は、2023/10/1に廃止されます。

売り手の氏名や名称が不要となる場合(国税庁長官指定者)

国税庁長官指定者で一定のものについては、
売り手の氏名や名称の記載を省略することができます。

参考規定

2 前項第一号に規定する国税庁長官が指定する者から受ける課税資産の譲渡等に係る課税仕入れ(同号に掲げる場合に該当するものに限る。)のうち、不特定かつ多数の者から課税仕入れを行う事業に係る課税仕入れについては、法第三十条第八項第一号の規定により同条第七項の帳簿に記載することとされている事項のうち同号イに掲げる事項は、同号の規定にかかわらず、その記載を省略することができる。

消費税法施行令49条2項、施行日令和5年10月1日

1項は、住所や所在地の記載が不要です。氏名や名称の記載は必要です。
2項は、氏名や名称の記載も不要です。

リサイクル業だと、不特定多数の消費者から課税仕入れがあるため、
消費者(売り手)の氏名等を省略できます。

媒介者、取次者、執行機関の名称を記載できる。

・卸売市場等の特例
・媒介者等交付特例
・執行機関の特例
に関する課税仕入れについては、
売り手の名称が記載されているインボイスが発行されないため、
帳簿については、売り手の名称ではなく、
媒介者、取次者、執行機関の名称を記載することができます。

参考規定

3 他の者から受けた課税資産の譲渡等のうち第七十条の九第二項第二号に掲げる課税資産の譲渡等又は第七十条の十二第一項若しくは第五項の規定の適用を受けた課税資産の譲渡等に係る課税仕入れについては、法第三十条第八項第一号の規定により同条第七項の帳簿に記載することとされている事項のうち同号イに掲げる事項は、同号の規定にかかわらず、当該事項に代えて第七十条の九第二項第二号若しくは第七十条の十二第一項に規定する媒介若しくは取次ぎに係る業務を行う者の氏名若しくは名称又は同条第五項に規定する執行機関の名称とすることができる。

消費税法施行令49条3項、施行日令和5年10月1日
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