自社ポイントと共通ポイントのポイント使用時の消費税の取扱い


今回はポイント使用時について、消費税の考え方を整理します。国税庁が公表している取扱いが変わるかもしれませんが、気になるところをメモします。

ポイント制度については、取引関係が複雑で内容が異なる場合も考えられますが、今回は下記の事例で考えています。

○ 共通ポイント制度を利用する事業者(加盟店A)及びポイント会員の取引の概要
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/0019012-152.pdf

国税庁、○ 共通ポイント制度を利用する事業者(加盟店A)及びポイント会員の一般的な処理例、2ページ目

気になる点は、自社ポイントと共通ポイントの性質は同じなのかという点。
性質が異なるから、課税関係も異なる。その結果、買手のポイント使用時に、(貸方)雑収入(課税対象外)が計上されると理解しています。

自社ポイントの場合

売り手が売った分に応じて、買い手のポイントが溜まり、買い手のポイントが溜まると値引き券など(値引きできるポイント)が発行されます。このポイントを利用した場合の課税関係は、売上返還や仕入返還ではなく、販売時の対価に直接反映させます。

例えば、A店が2,200円(税込)の商品販売時に、お客さんから値引き券500円(ポイント500円分)の提示があり、現金1,700円を受け取った場合。

売り手と買い手の処理

売り手の処理買い手の処理
現金1,700円 / 売上1,700円
(課税売上げ)
仕入1,700円 / 現金1,700円
(課税仕入れ)
売り手と買い手の処理

A店は、商品の引き渡しと引き換えに、現金1,700円と自ら発行した値引き券500円分を受け取ります。ただし、この値引き券については、対価の額にカウントしない(利用価値がない)ため、対価の額は1,700円となります。

参考情報

国税庁、質疑応答事例、
百貨店等が顧客サービスとして発行するお買物券等の課税関係
https://www.nta.go.jp/law/shitsugi/shohi/02/10.htm

参考規定

(課税標準)
第二十八条 課税資産の譲渡等に係る消費税の課税標準は、課税資産の譲渡等の対価の額(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭又は金銭以外の物若しくは権利その他経済的な利益の額とし、課税資産の譲渡等につき課されるべき消費税額及び当該消費税額を課税標準として課されるべき地方消費税額に相当する額を含まないものとする。以下この項及び第三項において同じ。)とする。省略

消費税法
共通ポイントの場合

売り手は、売り手が売った分に関係なく、買い手が提示した(値引き券)ポイントに応じて、値引き販売する必要があります。この値引き券(ポイント)を利用した場合の課税関係は、対価性がないため課税対象外とされています。

売り手と買い手の処理

売り手の処理買い手の処理
現金1,700円 / 売上2,200円
共通ポイント500円 /
(課税対象外)
仕入2,200円 / 現金1,700円
      / 雑収入500円
       (課税対象外)
売り手と買い手の処理

自社ポイントと異なり、共通ポイントには金銭以外の権利としての価値がありますので、対価の額は2,200円となります。

買い手の雑収入については、買い手は資産の譲渡等を行っていないため、課税売上げには該当しません。また、売り手が売上返還に該当しないため、買い手も仕入返還に該当しません。

ポイント制度を考えるときに思い出すのが、飛び越しリベート(消費税法基本通達14-1-2)の取扱いです。

飛び越しリベートの取り扱い

飛び越しリベートは売上返還に関する基本通達です。通常、売上返還と仕入返還は売り手と買い手の直接の関係で発生します。通達では、返還先については直接の取引先に限定しない旨が公表されています。間接の取引先でも売上返還等の消費税控除は認められています。

(事業者が支払う販売奨励金等)
14-1-2 事業者が販売促進の目的で販売奨励金等の対象とされる課税資産の販売数量、販売高等に応じて取引先(課税資産の販売の直接の相手方としての卸売業者等のほかその販売先である小売業者等の取引関係者を含む。)に対して金銭により支払う販売奨励金等は、売上げに係る対価の返還等に該当する。

消費税法基本通達

A事業者がB卸売業者等に商品を販売し、B卸売業者等がC小売業者等に商品を販売している場合、A事業者がC小売業者等(取引関係者)に対して支払った販売奨励金等についても、売上返還等の消費税の控除を適用することができます。

A事業者(売上返還)
 ↓
 ↓ 課税売上げ
 ↓
B卸売業者等
 ↓
 ↓ 課税売上げ
 ↓
C小売業者等(取引関係者)(仕入返還)

共通ポイントの場合、買い手事業者や消費者は取引関係者になると思います。A事業者の販売数量等に応じて共通ポイントが付与されると考えると、ポイント付与会社の支払ったポイント費用が売上返還の対象になるように見えます。
(国税庁公表資料では、対価性がないものとして課税対象外)

ポイント付与時の処理
200円につき1ポイント付与する場合

売り手の処理買い手の処理
現金22,000円 / 22,000円仕入22,000円 / 現金22,000円
ポイント費用110円 / 未払金110円
(国税庁資料では不課税) 
売り手と買い手の処理

国税庁公表資料の(注)に、「ポイント制度の規約等の内容によっては、消費税の課税取引に該当するケースも考えられる。」とあるため、ポイント費用が売上返還になる可能性はないのでしょう。

ポイント費用が課税取引に該当するか否かについては、
加盟店とポイント運営会社との取引(規約)次第なのでしょうね。

例えば、規約が「何らかの役務提供の対価=ポイント相当額」となるようなものであれば、下記のような課税関係になるのかもしれません。

ポイント付与時

加盟店Aポイント運営会社
ポイント費用110円 / 未払金110円
(課税仕入れ)
未収金110円 / サービス売上110円
(課税売上げ、インボイス発行)
売り手と買い手の処理

ポイント利用時

加盟店Aポイント運営会社
未収金110円 / サービス売上110円
(課税売上げ、インボイス発行)
ポイント費用110円 / 未払金110円
(課税仕入れ)
売り手と買い手の処理

値引き処理(純額処理)を原則としつつ、
場合によっては課税対象外になるケースもありそうですね。

参考規定

売上げに係る対価の返還等をした場合の消費税額の控除

第三十八条 事業者(第九条第一項本文の規定により消費税を納める義務が免除される事業者を除く。)が、国内において行つた課税資産の譲渡等(第七条第一項、第八条第一項その他の法律又は条約の規定により消費税が免除されるものを除く。)につき、返品を受け、又は値引き若しくは割戻しをしたことにより、当該課税資産の譲渡等の対価の額(第二十八条第一項に規定する対価の額をいう。)と当該対価の額に百分の十(当該課税資産の譲渡等が軽減対象課税資産の譲渡等である場合には、百分の八)を乗じて算出した金額との合計額(以下この項及び第三十九条において「税込価額」という。)の全部若しくは一部の返還又は当該課税資産の譲渡等の税込価額に係る売掛金その他の債権の額の全部若しくは一部の減額(以下この項から第四項までにおいて「売上げに係る対価の返還等」という。)をした場合には、当該売上げに係る対価の返還等をした日の属する課税期間の課税標準額に対する消費税額から当該課税期間において行つた売上げに係る対価の返還等の金額に係る消費税額(当該返還をした税込価額又は当該減額をした債権の額に百十分の七・八(当該売上げに係る対価の返還等が軽減対象課税資産の譲渡等に係るものである場合には、百八分の六・二四)を乗じて算出した金額をいう。次項において同じ。)の合計額を控除する。

消費税法
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