今回は、合併等があった場合の比較教育訓練費の調整を確認します。
合併があった場合の調整計算
賃上げ促進税制の教育訓練費や給与は、当期と前期が12か月であることを前提に比較します。合併があった場合には、当期と前期が12か月でなくなるため、比較できるように調整する必要があります。
調整方法は次の2つです。
1、賃上げ促進税制を使用する年度(適用年度)に合併があった場合
2、適用年度前に合併があった場合
教育訓練費の比較は必須ではありませんが、給与等を比較する規定は、教育訓練費の規定を置き換えて使用するため、先に教育訓練費の調整規定を確認します。
適用年度に合併があった場合
規定を見てもわかりづらいので、例で確認します。
具体例
X株式会社がY株式会社をR4/7/1に吸収合併した。
R5/3/31期が適用年度となる場合(適用年度に合併があった場合)
教育訓練費の情報
内容 | R3/4/1-R4/3/31 調整対象年度 (12月) | R4/4/1-R5/3/31 適用年度 (12月) |
---|---|---|
合併法人(X社) | 120万円 | 200万円 |
摘要 | - | R4/7/1合併 被合併法人の教育訓練費を含む。 |
内容 | R3/4/1-R4/3/31 (12月) | R4/4/1-R4/6/30 (3月) |
---|---|---|
被合併法人(Y社) | 60万円 | 20万円 |
摘要 | - | R4/7/1合併 |
加算する理由
合併後、合併法人の教育訓練費(200万円)には被合併法人の教育訓練費が含まれますが、比較教育訓練費120万円(前期)には、被合併法人の教育訓練費が含まれていません。そのため、被合併法人の教育訓練費(60万円)に一定の調整をした金額を、合併法人の比較教育訓練費(200万円)に加算します。
カッコ書きを外して、例をあてはめます。
1号、適用年度において行われた合併に係る合併法人(当期合併があった場合)
当該合併法人(X社)の基準日(R3/4/1)から当該適用年度開始の日の前日(R4/3/31)までの期間内の日を含む各事業年度(調整対象年度)については、
当該各調整対象年度ごとに当該合併法人(X社)の
当該各調整対象年度に係る教育訓練費の額(A、120万円)に
当該各調整対象年度に含まれる月の当該合併に係る被合併法人(Y社)の月別教育訓練費の額を合計した金額(B、60万円)に当該合併の日(R4/7/1)から当該適用年度終了の日(R5/3/31)までの期間の月数(C、9月)を乗じて
これ(D)を当該適用年度の月数(E、12月)で除して計算した金額(F)
を加算する。
合併法人の比較教育訓練費の計算
1、合併法人の比較教育訓練費
120万円(A)
2、合併法人に加算する金額
60万円(B)×9月(C)=540万円(D)÷12月(E)=45万円(F)
3、調整後の比較教育訓練費
120万円(A)+45万円(F)=165万円
適用年度前に合併があった場合
規定を見てもわかりづらいので、例を規定にあてはめます。
X株式会社がY株式会社をR4/7/1に吸収合併した場合
R6/3/31期が適用年度となる場合(適用年度の前に合併があった場合)
教育訓練費の情報
内容 | R4/4/1-R5/3/31 調整対象年度 (12月) | R5/4/1-R6/3/31 適用年度 (12月) |
---|---|---|
合併法人(X社) | 200万円 | 250万円 |
摘要 | R4/7/1合併 被合併法人の教育訓練費を含む。 | - |
内容 | R4/4/1-R4/6/30 (3月) | - |
---|---|---|
被合併法人 (Y社) | 20万円 | - |
摘要 | R4/7/1合併 | - |
加算する理由
合併後、合併法人の教育訓練費(250万円)には被合併法人の教育訓練費が含まれますが、比較教育訓練費(200万円)には、被合併法人の教育訓練費が一部含まれていません。そのため、被合併法人の教育訓練費(20万円)を、合併法人の比較教育訓練費(200万円)に加算します。
例を規定にあてはめます。
2号、基準日(R4/4/1)から適用年度開始の日の前日(R5/3/31)までの期間内において行われた合併に係る合併法人(前期合併があった場合)
当該合併法人(X社)の基準日(R4/4/1)から当該合併の日の前日(R4/6/30)までの期間内の日を含む各事業年度(当該合併法人が未経過法人に該当する場合には、基準日から当該合併法人の設立の日の前日までの期間を当該合併法人の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。以下この号において「調整対象年度」という。)については、
当該各調整対象年度ごとに当該合併法人(X社)の当該各調整対象年度に係る教育訓練費の額(A、200万円)に
当該各調整対象年度に含まれる月の当該合併に係る被合併法人の月別教育訓練費の額を合計した金額(B、20万円)
を加算する。
合併法人の比較教育訓練費の計算
1、合併法人の比較教育訓練費
200万円(A)
2、合併法人に加算する金額
20万円(B)
3、調整後の比較教育訓練費
200万円(A)+20万円(B)=220万円
参考規定
合併等があった場合の比較教育訓練費などの調整
6 前三項に定めるもののほか、第一項又は第二項の規定の適用を受けようとする法人が合併法人、分割法人若しくは分割承継法人、現物出資法人若しくは被現物出資法人又は現物分配法人若しくは被現物分配法人である場合における比較教育訓練費の額又は比較雇用者給与等支給額の計算、継続雇用者比較給与等支給額又は比較雇用者給与等支給額が零である場合におけるこれらの規定に規定する要件を満たすかどうかの判定その他これらの規定の適用に関し必要な事項は、政令で定める。
租税特別措置法42条の12の5、給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除
合併があった場合の比較教育訓練費の調整
12 法第四十二条の十二の五第一項又は第二項の規定の適用を受けようとする法人が次の各号に掲げる合併法人に該当する場合のその適用を受けようとする事業年度(以下第十七項までにおいて「適用年度」という。)の当該法人の同条第三項第八号に規定する比較教育訓練費の額(第十四項において「比較教育訓練費の額」という。)の計算における同号の教育訓練費の額については、当該法人の当該各号に規定する調整対象年度に係る教育訓練費の額(法人の事業年度の所得の金額の計算上損金の額に算入される同条第一項第二号に規定する教育訓練費の額をいう。以下この項及び次項において同じ。)は、当該各号に定めるところによる。
租税特別措置法施行令27条の12の5、給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除
一 適用年度において行われた合併に係る合併法人 当該合併法人の基準日から当該適用年度開始の日の前日までの期間内の日を含む各事業年度(当該合併法人が当該適用年度開始の日においてその設立の日の翌日以後一年を経過していない法人(以下第十七項までにおいて「未経過法人」という。)に該当する場合には、基準日から当該合併法人の設立の日の前日までの期間を当該合併法人の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。以下この号において「調整対象年度」という。)については、当該各調整対象年度ごとに当該合併法人の当該各調整対象年度に係る教育訓練費の額に当該各調整対象年度に含まれる月の当該合併に係る被合併法人の月別教育訓練費の額を合計した金額に当該合併の日から当該適用年度終了の日までの期間の月数を乗じてこれを当該適用年度の月数で除して計算した金額を加算する。
二 基準日から適用年度開始の日の前日までの期間内において行われた合併に係る合併法人 当該合併法人の基準日から当該合併の日の前日までの期間内の日を含む各事業年度(当該合併法人が未経過法人に該当する場合には、基準日から当該合併法人の設立の日の前日までの期間を当該合併法人の事業年度とみなした場合における当該事業年度を含む。以下この号において「調整対象年度」という。)については、当該各調整対象年度ごとに当該合併法人の当該各調整対象年度に係る教育訓練費の額に当該各調整対象年度に含まれる月の当該合併に係る被合併法人の月別教育訓練費の額を合計した金額を加算する。
月別教育訓練費の額の定義
13 前項に規定する月別教育訓練費の額とは、その合併に係る被合併法人の各事業年度に係る教育訓練費の額をそれぞれ当該各事業年度の月数で除して計算した金額を当該各事業年度に含まれる月に係るものとみなしたものをいう。
租税特別措置法施行令27条の12の5、給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除
基準日の定義
17 第十二項及び第十四項に規定する基準日とは、次に掲げる日のうちいずれか早い日をいう。
租税特別措置法施行令27条の12の5、給与等の支給額が増加した場合の法人税額の特別控除
一 法第四十二条の十二の五第一項又は第二項の規定の適用を受けようとする法人(以下この号において「適用法人」という。)が未経過法人に該当し、かつ、当該適用法人がその設立の日から適用年度開始の日の前日までの期間内に行われた合併又は分割等(残余財産の全部の分配に該当する現物分配にあつては当該設立の日から当該適用年度開始の日の前日を含む事業年度終了の日の前日までの期間内においてその残余財産が確定したものとし、その分割等に係る移転給与等支給額(給与等支給額を教育訓練費の額とみなした場合における前項に規定する移転教育訓練費の額をいう。)が零である場合における当該分割等を除く。以下この号及び第十九項第一号イにおいて同じ。)に係る合併法人又は分割承継法人等に該当する場合(当該設立の日から当該合併又は分割等の日の前日(残余財産の全部の分配に該当する現物分配にあつては、その残余財産の確定の日。第十九項第一号イにおいて同じ。)までの期間に係る給与等支給額が零である場合に限る。)における当該合併又は分割等に係る被合併法人又は分割法人等の当該適用年度開始の日前一年以内に開始した各事業年度のうち最も古い事業年度開始の日
二 適用年度開始の日前一年以内に開始した各事業年度のうち最も古い事業年度開始の日