今回は、グループ通算制度の対象法人を確認します。
規定が多いため、今回は法人税法64条の9第1項を確認します。
目次
通算承認(法人税法64条の9第1項)
内国法人がグループ通算制度を利用しようとする場合には、
その内国法人とその内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人の
全て(注1)が、国税庁長官の承認を受ける必要があります。
注1、親法人(注2)とその親法人との間に
その親法人による完全支配関係(注3)がある他の内国法人(注4)に限ります。
注2、親法人の定義
注3、通算承認の完全支配関係の定義
注4、他の内国法人の定義
他の内国法人の全て(注1)
原則として、親法人が完全支配している他の内国法人が通算制度の対象となります。通算制度を受ける法人は選択できません。通算制度に含めたくない場合は、事前に要件を満たさないように外しておく必要があります。
親法人、完全支配、他の内国法人(子法人など)に条件が付いています。
親法人(注2)
親法人の要件は次の3つです。
- 内国法人である普通法人又は協同組合等である。
- 下記1号から7号までの法人に該当しない。
- 6号・7号に似た政令で定める法人に該当しない。
(親法人が法人課税信託の受託法人でない。)
下記1号から7号までの法人に該当する場合、通算制度は使用できません。
- 清算中の法人
- 外国法人でない普通法人などとの間にその普通法人などによる完全支配関係がある法人
- 通算制度を止めた法人で5年が経過していないもの
- 青色申告の承認の取消しを受けた法人で5年が経過していないもの
- 青色申告を取り止めた法人で1年が経過していないもの
- 投資法人
- 特定目的会社—–親法人は1号から7号まで—–
- 普通法人以外の法人
- 破産手続開始の決定を受けた法人
- その他政令で定める法人—–子法人は3号から10号まで—–
通算承認の完全支配関係の定義(注3)
「完全支配関係(第三号から第十号までに掲げる法人及び外国法人が介在しないものとして政令で定める関係に限る。以下この目において同じ。)」とあります。
上記3号から10号までの法人と外国法人が、介在しないものとして
政令で定める関係に限る、と読みます。
例えば、完全支配関係であっても、普通法人以外の法人(8号)が
介在している場合、通算承認の制度上、完全支配関係に該当しません。
親法人
↓ 100%
子法人(3号から10号までの法人や外国法人が介在)
↓ 100%
孫法人(通算承認の対象外)
他の内国法人(子法人)(注4)
他の内国法人(第三号から第十号までに掲げる法人を除く。次項において同じ。)」とあります。
上記3号から10号までの法人は、通算制度の対象外です。
注3との違い
親法人
↓ 100%
子法人(通算承認の対象)
↓ 100%
孫法人(3号から10号までの法人は通算承認の対象外)
上記10号のその他政令で定める法人
(法人税法施行令131の11条3項)は、次の2つです。
- 法法64条の10第6項(注5)の規定により通算承認の効力を失った法人(注6)で5年を経過していないもの
- 法人課税信託の受託法人(子法人)
注5、6号限定、発行済株式等を直接又は間接に保有する通算子法人の破産手続開始の決定による解散に基因して6号に掲げる事実(完全支配関係の解消)が生じた場合を除く。
6号は、通算完全支配関係の解消です。
この解消が「通算子法人の破産手続開始の決定による解散」に
基因する場合は、除外されています。
以下、考え方を記載します。
例えば、次の関係の場合で、子法人が破産手続開始の決定による解散をすると、通算子法人の解散(法人税法64条の10第6項5号)により、通算子法人の通算承認は解散日の翌日に失効します。孫法人は法人税法64条の10第6項6号で通算承認が失効します。親法人は法人税法64条の10第6項7号で通算承認が失効します。
親法人(7号失効)
↓ 100%
子法人1(破産手続開始の決定による解散。5号失効。)
↓ 100%
孫法人1(6号失効)
原則として6号で失効した場合は、5年経過後に通算承認の対象法人となります(5年縛りあり)。上記で除外された孫法人1については、子法人の解散により関係が解消されただけですので、5年制限を設ける必要がないのでしょう。子法人が原因で5年間通算制度が使用できないのは不合理です。
通算承認の失効を回避する場合は、子法人1の解散前に親法人が孫法人株式を間接保有ではなく直接保有すれば、親法人と子法人2の通算制度が継続します。
親法人(通算制度継続)
↓ 100%
子法人2(通算制度継続)
→ 子法人1(破産手続開始の決定による解散。5号失効。)
注6、通算承認の効力を失った法人
その効力を失う直前に、親法人による完全支配関係
(同項に規定する政令で定める関係に限る(注7)があったものに限る。)
注7、同項(法人税法64条の9第1項)に規定する政令で定める関係に限る。
上記3号から10号までの法人と外国法人が、
介在しない100%支配関係(注3)です。
参考規定、通算承認の失効
6 次の各号に掲げる事実が生じた場合には、通算法人(第一号から第四号までにあつてはこれらの号に規定する通算親法人及び他の通算法人の全てとし、第五号及び第六号にあつてはこれらの号に規定する通算子法人とし、第七号にあつては同号に規定する通算親法人とする。)については、通算承認は、当該各号に定める日から、その効力を失うものとする。
一 通算親法人の解散 その解散の日の翌日(合併による解散の場合には、その合併の日)
法人税法64条の10、通算制度の取りやめ等
二 通算親法人が公益法人等に該当することとなつたこと その該当することとなつた日
三 通算親法人と内国法人(普通法人又は協同組合等に限る。)との間に当該内国法人による完全支配関係が生じたこと その生じた日
四 通算親法人と内国法人(公益法人等に限る。)との間に当該内国法人による完全支配関係がある場合において、当該内国法人が普通法人又は協同組合等に該当することとなつたこと その該当することとなつた日
五 通算子法人の解散(合併又は破産手続開始の決定による解散に限る。)又は残余財産の確定 その解散の日の翌日(合併による解散の場合には、その合併の日)又はその残余財産の確定の日の翌日
六 通算子法人が通算親法人との間に当該通算親法人による通算完全支配関係を有しなくなつたこと(前各号に掲げる事実に基因するものを除く。) その有しなくなつた日
七 前二号に掲げる事実又は通算子法人について前項の規定により通算承認が効力を失つたことに基因して通算法人が通算親法人のみとなつたこと そのなつた日
参考規定、解散の事由
(解散の事由)
会社法
第四百七十一条 株式会社は、次に掲げる事由によって解散する。
一 定款で定めた存続期間の満了
二 定款で定めた解散の事由の発生
三 株主総会の決議
四 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
五 破産手続開始の決定
六 第八百二十四条第一項又は第八百三十三条第一項の規定による解散を命ずる裁判
参考規定
(通算承認)
法人税法64条の9、通算承認
第六十四条の九 内国法人が前目の規定の適用を受けようとする場合には、当該内国法人及び当該内国法人との間に完全支配関係がある他の内国法人の全て(親法人(内国法人である普通法人又は協同組合等のうち、第一号から第七号までに掲げる法人及び第六号又は第七号に掲げる法人に類する法人として政令で定める法人のいずれにも該当しない法人をいう。以下この項において同じ。)及び当該親法人との間に当該親法人による完全支配関係(第三号から第十号までに掲げる法人及び外国法人が介在しないものとして政令で定める関係に限る。以下この目において同じ。)がある他の内国法人(第三号から第十号までに掲げる法人を除く。次項において同じ。)に限る。)が、国税庁長官の承認を受けなければならない。
一 清算中の法人
二 普通法人(外国法人を除く。)又は協同組合等との間に当該普通法人又は協同組合等による完全支配関係がある法人
三 次条第一項の承認を受けた法人でその承認を受けた日の属する事業年度終了の日の翌日から同日以後五年を経過する日の属する事業年度終了の日までの期間を経過していないもの
四 第百二十七条第二項(青色申告の承認の取消し)の規定による通知を受けた法人でその通知を受けた日から同日以後五年を経過する日の属する事業年度終了の日までの期間を経過していないもの
五 第百二十八条(青色申告の取りやめ)に規定する届出書の提出をした法人でその届出書を提出した日から同日以後一年を経過する日の属する事業年度終了の日までの期間を経過していないもの
六 投資法人
七 特定目的会社
八 普通法人以外の法人
九 破産手続開始の決定を受けた法人
十 その他政令で定める法人
(通算法人の範囲)
法人税法施行令131条の11
第百三十一条の十一 法第六十四条の九第一項各号列記以外の部分(通算承認)に規定する政令で定める法人は、法人課税信託(法第二条第二十九号の二ニ又はホ(定義)に掲げる信託に限る。)に係る法第四条の三(受託法人等に関するこの法律の適用)に規定する受託法人とする。
2 法第六十四条の九第一項に規定する政令で定める関係は、第四条の二第二項(支配関係及び完全支配関係)中「一の者(その者が個人である場合には、その者及びこれと前条第一項に規定する特殊の関係のある個人)が法人」とあるのを「内国法人が他の内国法人(法第六十四条の九第一項第三号から第十号まで(通算承認)に掲げる法人を除く。)」と、「当該一の者」とあるのを「当該内国法人」と、「法人と」とあるのを「他の内国法人と」と、「二以上の法人が他の法人」とあるのを「二以上の法人が他の内国法人(法第六十四条の九第一項第三号から第十号までに掲げる法人を除く。)」と、「当該他の法人」とあるのを「当該他の内国法人」と、同項各号中「当該法人」とあるのを「当該他の内国法人」と読み替えた場合に完全支配関係に該当する関係とする。
3 法第六十四条の九第一項第十号に規定する政令で定める法人は、次に掲げる法人とする。
一 法第六十四条の十第六項(第六号に係る部分に限るものとし、その発行済株式又は出資を直接又は間接に保有する通算子法人の破産手続開始の決定による解散に基因して同号に掲げる事実が生じた場合を除く。)(通算制度の取りやめ等)の規定により法第六十四条の九第一項の規定による承認の効力を失つた法人(その効力を失う直前において同項に規定する親法人による完全支配関係(同項に規定する政令で定める関係に限る。)があつたものに限る。)でその効力を失つた日から同日以後五年を経過する日の属する事業年度終了の日までの期間を経過していないもの
二 法人課税信託(法第二条第二十九号の二ニ又はホに掲げる信託に限る。)に係る法第四条の三に規定する受託法人