今回は、居住用財産を譲渡した場合の3000万円の特別控除を
確認してみましょう。
目次
内容
個人が、居住用財産を売却した場合は、
売却益から3000万円を控除することができます。
居住用財産の所有期間の制限はありません。
不動産の所有期間が5年超の場合は長期譲渡所得(税率が低い)、
不動産の所有期間が5年以内の場合は短期譲渡所得(税率が高い)
となりますが、売却益から3000万円をマイナスして所得が0円になる場合は、
税金が発生しません。
3000万円の特別控除のポイントは、「居住用財産の譲渡」です。
居住用財産の譲渡
3000万円の特別控除の対象となる居住用財産の譲渡は、次の2つです。
- 実際に住んでいる自宅等の譲渡
- 実際に住んでいない自宅等の譲渡
実際に住んでいない自宅等も特別控除の対象となります。
実際に住んでいる自宅等の要件から確認します。
実際に住んでいる自宅等(居住用家屋等)
自宅が対象となりますが、
自宅の一部を居住用以外に使用している場合(例えば事務所)は、
事務所部分については特別控除の対象となりません。
2以上の家屋がある場合は、
主たる家屋(建物部分)が特別控除の対象となります。
特別控除の対象となる自宅の土地等についても
特別控除の対象となります。
(譲渡所得となる不動産等の貸付けを含みます。)
参考規定
2 法第三十一条の三第二項第一号に規定する政令で定める家屋は、個人がその居住の用に供している家屋(当該家屋のうちにその居住の用以外の用に供している部分があるときは、その居住の用に供している部分に限る。以下この項において同じ。)とし、その者がその居住の用に供している家屋を二以上有する場合には、これらの家屋のうち、その者が主としてその居住の用に供していると認められる一の家屋に限るものとする。
租税特別措置法施行令20条の3、居住用財産を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例
特別控除が使用できない場合
居住用財産を譲渡した場合であっても、
譲渡した年の1年前、2年前において、
3000万円の特別控除や他の特例を使用している場合は、
特別控除が使用できません。
特別控除が使用できない他の特例(参考)
措法35条、居住用財産の譲渡所得の特別控除(空き家特例を除く)
→ 3000万円の特別控除
措法36条の2、特定の居住用財産の買換えの場合の長期譲渡所得の課税の特例
→ 課税の繰延べ
措法36条の5、特定の居住用財産を交換した場合の長期譲渡所得の課税の特例
→ 税率の軽減
措法41条の5、居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
→ 損益の通算と繰越し
措法41条の5の2、特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除
→ 損益の通算と繰越し
空き家特例は除外されているため、
短期間で2回使用することは可能です。
特別控除が使用できない譲渡
居住用家屋の譲渡であっても、特別控除が使用できない場合があります。
例えば、配偶者などの親族に譲渡した場合です。
他には、他の特例を使用する場合についても特別控除が使用できません。
特別控除が使用できなくなる特例(参考)
所法58条、固定資産の交換の場合の譲渡所得の特例
措法33条、収用等に伴い代替資産を取得した場合の課税の特例
措法33条の2、交換処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例
措法33条の3、換地処分等に伴い資産を取得した場合の課税の特例
措法33条の4、収用交換等の場合の譲渡所得等の特別控除
措法37条、特定の事業用資産の買換えの場合の譲渡所得の課税の特例
措法37条の4、特定の事業用資産を交換した場合の譲渡所得の課税の特例
措法37条の8、特定普通財産とその隣接する土地等の交換の場合の譲渡所得の課税の特例
メモ
自宅として使用していた家屋を事業用に転用した場合、
居住用家屋の譲渡と事業用資産の特例が重複することがあるため、
事業用資産の特例が除外されています。
実際に住んでいない自宅等
特別に次の不動産についても特別控除の対象となります。
- 災害により滅失した自宅に使用していた土地等(建物なし)
- 自宅として使用していた家屋とその家屋に使用している土地等
ただし、自宅として使用しなくなった日から
3年目の年末までに譲渡している必要があります。
例えば、使用しなくなった日が2019年10月2日の場合、
2022年12月31日までに譲渡していれば、特別控除が使用できます。
手続き
特別控除を使用するためには、
確定申告書に、「居住用財産の譲渡所得の特別控除」を使用する旨等を記載をして、確定申告書に計算明細書、その他一定の書類を添付する必要があります。
添付書類の留意点
添付書類は次の2つです。
イ、譲渡所得の計算書
ロ、住所地と所在地が異なる場合
その譲渡契約締結日の前日においてその譲渡者(Aさん)の住民票に記載されていた住所(〇〇市)とその譲渡した土地建物等の所在地(××市)とが異なる場合には、戸籍の附表の写し、消除された戸籍の附表の写し、その他これらに類する書類で一定の事実を明らかにするもの
添付書類
2 法第三十五条第十一項に規定する財務省令で定める書類は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める書類とする。
租税特別措置法施行規則18条の2、2項
一 前項第一号に掲げる場合 次に掲げる書類
イ 法第三十五条第一項に規定する資産の譲渡による譲渡所得の金額の計算に関する明細書
ロ イの譲渡に係る契約を締結した日の前日において当該譲渡をした者の住民票に記載されていた住所と当該譲渡をしたイの資産の所在地とが異なる場合その他これに類する場合には、戸籍の附票の写し、消除された戸籍の附票の写しその他これらに類する書類で前項第一号ロに掲げる事項を明らかにするもの
(居住用財産の譲渡所得の特別控除)
租税特別措置法施行規則18条の2
第十八条の二 法第三十五条第十一項に規定する財務省令で定める事項は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ当該各号に定める事項とする。
一 法第三十五条第二項各号のいずれかの場合に該当するものとして同条第一項の規定の適用を受ける場合 次に掲げる事項
イ 法第三十五条第二項各号のいずれかの場合に該当するものとして同条第一項の規定の適用を受けようとする旨
ロ 法第三十五条第二項各号のいずれかの場合に該当する事実
35条2項各号=
1号が実際に住んでいる自宅等
2号が実際に住んでいない自宅等
参考規定
居住用財産の譲渡所得の特別控除
第三十五条 個人の有する資産が、居住用財産を譲渡した場合に該当することとなつた場合には、その年中にその該当することとなつた全部の資産の譲渡に対する第三十一条又は第三十二条の規定の適用については、次に定めるところによる。
一 第三十一条第一項中「長期譲渡所得の金額(」とあるのは、「長期譲渡所得の金額から三千万円(長期譲渡所得の金額のうち第三十五条第一項の規定に該当する資産の譲渡に係る部分の金額が三千万円に満たない場合には当該資産の譲渡に係る部分の金額とし、同項第二号の規定により読み替えられた第三十二条第一項の規定の適用を受ける場合には三千万円から同項の規定により控除される金額を控除した金額と当該資産の譲渡に係る部分の金額とのいずれか低い金額とする。)を控除した金額(」とする。
二 第三十二条第一項中「短期譲渡所得の金額(」とあるのは、「短期譲渡所得の金額から三千万円(短期譲渡所得の金額のうち第三十五条第一項の規定に該当する資産の譲渡に係る部分の金額が三千万円に満たない場合には、当該資産の譲渡に係る部分の金額)を控除した金額(」とする。2 前項に規定する居住用財産を譲渡した場合とは、次に掲げる場合(当該個人がその年の前年又は前々年において既に同項(次項の規定により適用する場合を除く。)又は第三十六条の二、第三十六条の五、第四十一条の五若しくは第四十一条の五の二の規定の適用を受けている場合を除く。)をいう。
租税特別措置法35条
一 その居住の用に供している家屋で政令で定めるもの(以下この項において「居住用家屋」という。)の譲渡(当該個人の配偶者その他の当該個人と政令で定める特別の関係がある者に対してするもの及び所得税法第五十八条の規定又は第三十三条から第三十三条の四まで、第三十七条、第三十七条の四若しくは第三十七条の八の規定の適用を受けるものを除く。以下この項及び次項において同じ。)又は居住用家屋とともにするその敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡(譲渡所得の基因となる不動産等の貸付けを含む。以下この項及び次項において同じ。)をした場合
二 災害により滅失した居住用家屋の敷地の用に供されていた土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡又は居住用家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたものの譲渡若しくは居住用家屋で当該個人の居住の用に供されなくなつたものとともにするその敷地の用に供されている土地若しくは当該土地の上に存する権利の譲渡を、これらの居住用家屋が当該個人の居住の用に供されなくなつた日から同日以後三年を経過する日の属する年の十二月三十一日までの間にした場合
居住用家屋
(居住用財産の譲渡所得の特別控除)
租税特別措置法施行令23条
第二十三条 第二十条の三第二項の規定は、法第三十五条第二項第一号に規定する政令で定める家屋について準用する。
手続き
11 第一項の規定は、その適用を受けようとする者の同項に規定する資産の譲渡をした日の属する年分の確定申告書に、同項の規定の適用を受けようとする旨その他の財務省令で定める事項の記載があり、かつ、当該譲渡による譲渡所得の金額の計算に関する明細書その他の財務省令で定める書類の添付がある場合に限り、適用する。
租税特別措置法35条
12 税務署長は、確定申告書の提出がなかつた場合又は前項の記載若しくは添付がない確定申告書の提出があつた場合においても、その提出又は記載若しくは添付がなかつたことについてやむを得ない事情があると認めるときは、当該記載をした書類及び同項の財務省令で定める書類の提出があつた場合に限り、第一項の規定を適用することができる。