インボイスの交付義務免除とインボイスの保存義務免除


令和5年度改正を2点確認します。

インボイスの交付義務免除

この改正は、売り手の取扱いです。

売上のマイナス(売上返還等)の税込価額が10,000円未満については、
返還インボイスの交付義務が免除となります。

次のような仕訳です。

借方貸方
普通預金 21,340円売掛金 22,000円
支払手数料など 660円
仕訳1

売掛金回収時に、振込手数料が差し引かれる場合、
売り手が振込手数料を負担したとしても、
返還インボイスの交付が不要となります。

参考情報

(3)売上げに係る対価の返還等に係る税込価額が1万円未満である場合には、その適格返還請求書の交付義務を免除する。

(注)上記の改正は、令和5年 10 月1日以後の課税資産の譲渡等につき行う売上げに係る対価の返還等について適用する。

令和5年度税制改正の大綱、56ページ
インボイスの保存義務不要

この改正は、買い手の取扱いです。

小規模事業者が一定期間中に行う課税仕入れについて、課税仕入れの税込金額が10,000円未満の場合は、一定の条件を満たす帳簿で消費税の控除ができます。インボイスの保存は不要ですが、帳簿の保存は必要です。

単純な仕入や経費の支払いだけではなく、
次のような仕訳もこの改正の対象です。

借方貸方
普通預金 21,340円売掛金 22,000円
支払手数料など 660円
仕訳2

あえて返還インボイスと同じ仕訳にしてみました。

上記2つの取引(仕訳)については、
取引の内容を確認しないと返還インボイスの取引なのか、
インボイスの保存義務不要の取引なのか判断できません。
この判断の省略が目的なのでしょう。

返還インボイスの金額要件を10,000円としたのは、
インボイス保存不要要件の10,000円と併せたのでしょうね。
金額が異なると複雑ですから。

参考情報

(2)基準期間における課税売上高が1億円以下又は特定期間における課税売上高が 5,000 万円以下である事業者が、令和5年10月1日から令和11年9月 30日までの間に国内において行う課税仕入れについて、当該課税仕入れに係る支払対価の額が1万円未満である場合には、一定の事項が記載された帳簿のみの保存による仕入税額控除を認める経過措置を講ずる。

令和5年度税制改正の大綱、56ページ
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内容返還インボイスの
交付義務免除
インボイスの
保存義務不要
対象者売り手買い手
対象者の制限制限なし・基準期間における課税売上高が1億円以下
・特定期間における課税売上高が5,000万円以下である事業者
特例が使える期間令和5年10月1日以後令和5年10月1日から
令和11年9月30日まで
特例が使える金額税込10,000円未満税込10,000円未満
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