今回は、未払法人税等の取崩しと別表調整を確認してみましょう。
前提
前提は次のとおりです。
前期
当期の取引は、(借方)現金/(貸方)売上 100万円のみとします。
損益計算書
税引前当期純利益 1,000,000円
当期純利益 1,000,000円
法人税がかかる所得 1,000,000円
税金計算
法人税(地方法人税含む)の税率は25% 250,000円
法人県民税の税率は1% 2,500円
法人市民税の税率は6% 15,000円
法人事業税の税率は7% 70,000円
法人税等の合計は、337,500円とします。
納付する法人税等337,500円を未払計上した後の貸借対照表
資産 | 負債・純資産 |
---|---|
現預金 1,000,000円 | 未払法人税等 337,500円 |
- | 繰越利益剰余金 662,500円 |
未払法人税等の取崩し
当期の取引は、
(借方)未払法人税等/(貸方)現預金337,500円のみとします。
会計上の仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
未払法人税等 337,500円 | 現預金 337,500円 |
他に取引がないため、損益計算書の当期純利益は0円です。
科目 | 設定前 |
---|---|
税引前当期純利益 | 0円 |
法人税等 | 0円 |
当期純利益 | 0円 |
貸借対照表
資産 | 負債・純資産 |
---|---|
現預金 662,500円 | 繰越利益剰余金 662,500円 |
別表4、所得の金額
当期純利益は0円ですので、
別表4の当期利益(1)に0円を記入します。
納税充当金の取崩しがあった場合には、
納税充当金から支出した事業税等の金額(13)の処理が必要です。
会計上の仕訳で損益が生じませんが、税金計算上、
未払法人税等の戻入れと税金の支払いを分けて処理します。
会計上の仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
未払法人税等 337,500円 | 現預金 337,500円 |
税金計算上の仕訳
借方 | 貸方 |
---|---|
未払法人税等 337,500円 | 未払法人税等戻入益 337,500円 (減算・留保) |
法人税等(法人税) 250,000円 (加算・留保) | 現預金 250,000円 |
法人税等(住民税) 17,500円 (加算・留保) | 現預金 250,000円 |
法人税等(事業税) 70,000円 (税務調整なし) | 現預金 250,000円 |
上記の税務調整は3つありますが、それぞれ相殺します。
- 未払法人税等戻入益 337,500円(減算・留保)
- 法人税等(法人税) 250,000円(加算・留保)
- 法人税等(住民税) 17,500円(加算・留保)
相殺しますと、未払法人税等戻入益70,000円(減算・留保)が残ります。
(337,500円-250,000円-17,500円=70,000円)
未払法人税等戻入益70,000円(減算・留保)を
別表4の「納税充当金から支出した事業税等の金額、13」に記入します。
別表4、所得の金額
区分 | 相殺前 | 相殺後 |
---|---|---|
当期利益又は当期欠損の額、1 | 0円 | 0円 |
損金経理をした法人税及び地方法人税、2 | 250,000円 | 0円 |
損金経理をした道府県民税及び市町村民税、3 | 17,500円 | 0円 |
納税充当金から支出した事業税等の金額、13 | △337,500円 | △70,000円 |
所得金額又は欠損金額、52 | △70,000円 | △70,000円 |
別表4の所得金額(52)は△70,000円となります。
別表5(1)、利益積立金額
期首の金額は、前期末の金額を記入します。
繰越損益金(25)の減少に、期首の金額662,500円を入力します。
納税充当金(26)の減少に、
今回取り崩した未払法人税等337,500円を入力します。
下記3つは、今回納付した金額です。
1、未納法人税及び未納地方法人税(27)の減少△250,000円
2、未納道府県民税(29)の減少△2,500円
3、未納市町村民税(30)の減少△15,000円
未納法人税及び未納地方法人税(27)以下は、
自動計算されることが多いため、金額の一致を確認します。
繰越損益金(25)の増加に
貸借対照表の繰越利益剰余金662,500円を入力します。
区分 | 期首 | 減少 | 増加 | 期末 | 摘要 |
---|---|---|---|---|---|
繰越損益金、25 | 662,500 | 662,500 | 662,500 | 662,500 | 通常、繰越利益剰余金と一致します。 |
納税充当金、26 | 337,500 | 337,500 | 0 | 0 | 通常、未払法人税等と一致します。 |
未納法人税及び未納地方法人税、27 | △250,000 | △250,000 | 中間 0 確定 0 | 0 | 税務上の金額 |
未払通算税効果額、28 | 0 | 0 | 中間 0 確定 0 | 0 | 同上 |
未納道府県民税、29 | △2,500 | △2,500 | 中間 0 確定 0 | 0 | 同上 |
未納市町村民税、30 | △15,000 | △15,000 | 中間 0 確定 0 | 0 | 同上 |
差引合計額、31 | 732,500 | 732,500 | 662,500 | 662,500 | 同上 |
前期末時点では、
会計上の繰越利益剰余金662,500円、別表5-1の繰越損益金662,500円、
別表5-1の差引合計額(利益積立金額)732,500円で、
法人事業税70,000円部分が相違していましたが、
今回の税金の支払いにより662,500円で一致します。
法人事業税70,000については、
期末時点の利益積立金額の減少項目ではありませんが、
申告納付の時点で利益積立金額の減少項目となります。