今回は、国税庁のインボイスに関するQ&Aを確認してみましょう。
令和5年4月14日に色々更新されていますね。
消費税の仕入税額控除制度における
適格請求書等保存方式に関するQ&A
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/qa/01-01.pdf
気になった項目を確認していきます。
目次
問29、売上返還インボイスの判定単位
売上返還インボイスについては、差し引かれる振込手数料等の関係から、1万円未満の場合、交付義務が免除となりました。この1万円未満の判定に関するQ&Aです。
1商品当たり100円(1万円未満)のリベートであっても、
合計して1万円以上となる場合は、交付義務が免除されません。
10%税率と軽減8%税率が混在している場合であっても
請求や債権の単位ごとで判定します。
問30、売手が負担する振込手数料相当額
3パターン公表されてます。
- 売上のマイナスとして取り扱う方法
- 売り手がサービスを受けたとする方法
- 買い手が立替払いする方法
売上のマイナスとする方法
インボイス制度後はこの方法が増えると思います。
売り手については、売上返還インボイスの交付義務免除の対象となるため、
追加の手続きは不要となります。軽減8%売上がある場合は、売上返還の税率についても軽減8%となります。
非課税売上と10%売上、10%売上と軽減8%売上、
非課税売上と軽減8%売上が混在している場合は、
インボイスに表示する、契約で決める、合理的な按分が考えられます。
合理的な按分方法
前月の10%売上が6,000円、前月の軽減8%売上が4,000円の場合に
次の請求書を受け取って、合理的に按分したときの仕訳
前月繰越 | 入金額 | 値引き (手数料) | 当月発生 | 翌月繰越 |
---|---|---|---|---|
10,000円 | 9,560円 | 440円 | 8,000円 | 8,000円 |
売り手の仕訳例
借方 | 貸方 |
---|---|
預金 9,560円 | 売掛金 10,000円 |
手数料(売上返還10%)264円 手数料(売上返還軽減8%)176円 | - |
手数料を60%と40%で按分します。
勘定科目を支払手数料、消費税の区分を売上返還とします。
買い手の仕訳例
借方 | 貸方 |
---|---|
買掛金 9,560円 手数料(課税仕入れ10%) 440円 | 預金 10,000円 |
買掛金 440円 | 手数料等(仕入返還10%)264円 手数料等(仕入返還軽減8%)176円 |
勘定科目を雑収入、仕入、他の経費科目で処理して、
消費税の区分を仕入返還とする方法も考えられます。
売り手がサービスを受けたとする方法
買い手が売り手に対して振込手数料相当額のサービスを行っているため、買い手が売り手としてインボイスを発行する義務が生じます。このインボイスについては、売上返還インボイスに該当しないため交付義務が免除されません。
売り手の仕訳例
借方 | 貸方 |
---|---|
預金 9,560円 | 売掛金 10,000円 |
手数料(課税仕入れ10%) 440円 | - |
買い手の仕訳例
借方 | 貸方 |
---|---|
買掛金 9,560円 手数料(課税仕入れ10%) 440円 | 預金 10,000円 |
買掛金 440円 | サービス売上(10%売上) 440円 インボイス発行義務あり。 簡易課税の場合は5種でしょう。 |
買い手が立替払いする方法
買い手が立替金精算書と金融機関から受け取ったインボイスを
売り手に交付する方法です。
Q&Aの中で、「この場合、買手が請求金額から差し引く金額が金融機関の振込手数料と同額である必要があります。」とあるため、同額でない場合はこの方法が使えません。
買い手のATM手数料は自動販売機特例の対象となるため、売り手が一定の確認を行えば、買い手の立替金精算書等の交付は不要となります。
売り手の仕訳例
借方 | 貸方 |
---|---|
預金 9,560円 | 売掛金 10,000円 |
手数料(課税仕入れ10%) 440円 | - |
買い手の仕訳例
借方 | 貸方 |
---|---|
買掛金 9,560円 立替金(手数料) 440円 | 預金 10,000円 |
買掛金 440円 | 立替金(手数料) 440円 |
立替払いのため同額精算が前提です。
問31、売手が負担する振込手数料相当額に係る経理処理の変更
売上返還とする場合の実務上の方法として、
通常の支払手数料と判別できるようにする方法が紹介されています。
自社の振込手数料は、課税仕入れ10%、
売上返還の場合は、売上に応じて10%、軽減8%、0%、非課税等、
売上の種類が複数ある場合は、事前に処理を確認しておきましょう。
按分計算しない場合の記載例
2023/8/4、追加
国税庁、インボイス制度に関するQ&A、問68
(端数値引きがある場合の適格請求書の記載)のP85に、
按分しないで値引き処理する記載方法が公表されています。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/qa_invoice_mokuji.htm
参考通達
2023/5/9、追加
原則は按分計算ですが、
値引額(返還額)が確認できるときは確認した金額で処理できる通達です。
軽減対象資産の譲渡等とそれ以外の資産の譲渡等を一括して対象とする値引販売
15 事業者が、軽減対象資産の譲渡等とそれ以外の資産の譲渡等を同時に行った場合には、それぞれの資産の譲渡等ごとに適用税率を判定することとなるが、例えば、顧客が割引券等を利用したことにより、これら同時に行った資産の譲渡等を対象として一括して対価の額の値引きが行われており、当該資産の譲渡等に係る適用税率ごとの値引額又は値引額控除後の対価の額が明らかでないときは、割引券等による値引額を当該資産の譲渡等に係る価額の比率により按分し、適用税率ごとの値引額及び値引額控除後の対価の額を区分することとなることに留意する。
消費税の軽減税率制度に関する取扱通達の制定について(法令解釈通達)
なお、当該資産の譲渡等に際して顧客へ交付する領収書等の書類により適用税率ごとの値引額又は値引額控除後の対価の額が確認できるときは、当該資産の譲渡等に係る値引額又は値引額控除後の対価の額が、適用税率ごとに合理的に区分されているものに該当する。
消費税の軽減税率制度に関するQ&A
問93、食品と酒類のセット販売時の一括値引
したがって、例えば、軽減税率の適用対象とならない課税資産の譲渡等の対価の額からのみ値引きしたとしても、値引額又は値引き後の対価の額が領収書等の書類により確認できるときは、適用税率ごとに合理的に区分されているものに該当します。
消費税の軽減税率制度に関するQ&A
問93、食品と酒類のセット販売時の一括値引