事業年度開始の日の2年前の日はいつ?


今回は「事業年度開始の日の2年前の日」について確認してみましょう。
期間の遡り計算について法人税法と消費税法で異なる部分があります。

同じ言葉でも法律によって異なることがあるため、そういうこともあるよねと思っていましたが、税法の違いではなく、期間を計算する内容や目的によって異なると考えますので確認していきます。

消費税法で登場する起算日

期間を数え始める日を「起算日」といいます。

消費税法の起算日は、基準期間に登場します。
(基準期間以外にもたくさんあります。)

基準期間の定義

十四 基準期間 個人事業者についてはその年の前々年をいい、法人についてはその事業年度の前々事業年度(当該前々事業年度が一年未満である法人については、その事業年度開始の日の二年前の日の前日から同日以後一年を経過する日までの間に開始した各事業年度を合わせた期間)をいう。

消費税法2条1項14号

「その事業年度開始の日」が2023/4/1の場合、
起算日は2023/4/1、2年前の日は2021/4/2となります。

法人税法で登場する起算日

組織再編税制等の規定で「事業年度開始の日の5年前の日」が登場します。
「事業年度開始の日」が2023/4/1の場合、
初日不算入(その日はカウントしないルール)で起算日は2023/3/31、
2023/3/31の5年前の日は2018/4/1となります。

初日不算入となる理由を考えてみると
5年前の日から「継続して」とあり、初日算入で5年戻ると
「継続して」に該当しない場合(例えば、4/1の途中で支配関係が成立する場合)があり、不公平をなくすために初日不算入としているのかもしれません。

5年前の4/1の午前0時から継続してと考えた場合、
4/1の前日の3/31に支配関係が成立している必要があります。

 X-5年4/1                          X年4/1
--|-----|-----|-----|-----|-----|
  →午前0時から継続

最近の法令では、グループ通算制度の承認申請期限が
「最初の事業年度開始の日の3月前の日までに」と規定されています。
最初の事業年度開始の日が2024/1/1の場合、
2023/9/30までに承認申請書を提出する必要があります。

提出期限の考え方
初日不算入で起算日は2023/12/31、
3月前の日の2023/9/31は存在しないため、2023/9/30と計算します。
(曜日は確認していません。)

初日算入か初日不算入か

消費税法では初日を算入するため2年前の日は2021/4/2、
法人税法では初日を算入しないため5年前の日は2018/4/1で、
1日の差が生じます。
(年は無視します。)

初日算入か初日不算入かについては、
国税通則法10条(期間の計算及び期限の特例)に規定されています。

(期間の計算及び期限の特例)
第十条 国税に関する法律において日、月又は年をもつて定める期間の計算は、次に定めるところによる。
一 期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるとき、又は国税に関する法律に別段の定めがあるときは、この限りでない。
二 期間を定めるのに月又は年をもつてしたときは、暦に従う。
三 前号の場合において、月又は年の始めから期間を起算しないときは、その期間は、最後の月又は年においてその起算日に応当する日の前日に満了する。ただし、最後の月にその応当する日がないときは、その月の末日に満了する。

国税通則法

原則は初日不算入です。
例外で、その期間が午前0時から始まるとき等は初日算入となります。

初日が丸一日ある場合は初日(4/1)から
初日が丸一日ない場合は次の日(4/2)から起算する規定です。

「事業年度開始の日」は午前0時から4/2の直前までで、
初日が丸一日あるため、4/1からカウントしても問題がないと考えます。

過去に遡る場合

過去に遡る場合の規定はなく、上記規定を類推適用や準用します。
この類推適用や準用で結論が異なるのでしょうね。

基準期間の遡り計算については、組織再編税制や通算承認申請のように、何かを規制や制限するためではなく、ただ単に合理的な期間(前々事業年度に相当する1年間)を計算するために遡っています。

組織再編税制等の遡り計算については、不公平をなくすために
初日不算入ルールを適用しているのではないかと推測します。

法人税法の規定でも初日算入しているものがある。

期間を計算する内容や目的によって異なるかも?と考えた理由は、
「適格合併があった場合の法人税の中間申告」の規定です。

合併法人の法人税だけではなく、被合併法人の法人税を考慮して、
中間申告税額を計算する特例です。

この規定の1号が前事業年度中の適格合併で、
「当該事業年度開始の日の1年前の日」とあり、3月決算の場合、
1年前の日は4/1ではなく消費税法の期間計算と同様に4/2を指します。
(地方税にも同様の規定があります。)

適格合併があった場合の法人税の中間申告の規定

2 前項の場合において、同項の普通法人が次の各号に掲げる期間内に行われた適格合併(法人を設立するものを除く。以下この項において同じ。)に係る合併法人であるときは、その普通法人が提出すべき当該事業年度の中間申告書については、前項第一号に掲げる金額は、同号の規定にかかわらず、同号の規定により計算した金額に相当する金額に当該各号に定める金額を加算した金額とする。
一 当該事業年度の前事業年度 当該普通法人の当該事業年度開始の日の一年前の日以後に終了した当該適格合併に係る被合併法人の各事業年度(その月数が六月に満たないものを除く。)の法人税額(第六十九条第二十三項において準用する同条第十九項の規定により加算された金額がある場合には、当該金額を控除した金額。第五項において同じ。)で六月経過日の前日までに確定したもののうち最も新しい事業年度に係るもの(次号及び次項において「被合併法人確定法人税額」という。)をその計算の基礎となつた当該被合併法人の事業年度の月数で除し、これに当該普通法人の当該前事業年度の月数のうちに占める当該前事業年度開始の日から当該適格合併の日の前日までの期間の月数の割合に中間期間の月数を乗じた数を乗じて計算した金額
二 当該事業年度開始の日から六月経過日の前日までの期間 当該適格合併に係る被合併法人の被合併法人確定法人税額をその計算の基礎となつた当該被合併法人の事業年度の月数で除し、これに当該適格合併の日から六月経過日の前日までの期間の月数を乗じて計算した金額

法人税法71条
まとめ

遡り計算の起算日の考え方は、法律の違いではなく期間を計算する内容や目的によって異なると考えれば、初日算入も初日不算入も正しいと考えられます。
(何かを基準にして使い分けされているのかもしれませんね。)

PAGE TOP