今回は、国税庁Q&Aの数字を使って、通算税効果額の計上過程を確認します。
前提を簡単にしたいので、欠損金の通算や試験研究費を除きます。
前提
下記の資料の金額を使用しています。
国税庁、グループ通算制度に関するQ&A(令和2年6月)(令和2年8月、令和3年6月改訂、令和4年7月改訂)
問58、通算税効果額の計算方法
https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/hojin/group_faq/58.htm
損益通算前の所得で法人税を計算
下記の前提で、1の通算前所得に税率をかけて法人税を計算しています。
内容 | A社 | B社 | C社 | 合計 |
---|---|---|---|---|
1、通算前所得 | 780 | 1,800 | (-1,720) | 860 |
2、損益通算 | (-520) | (-1,200) | 1,720 | 0 |
3、損益通算後所得 | 260 | 600 | 0 | 860 |
4、法人税率 | 23.20% | 23.20% | 23.20% | - |
5、法人税額 | 181 | 418 | (-399) | 200 |
6、地方法人税率 | 10.30% | 10.30% | 10.30% | - |
7、地方法人税額 | 19 | 43 | (-41) | 21 |
8、合計 | 200 | 461 | (-440) | 220 |
8、合計の仕訳の次のとおりです。
法人名 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
A社 | 法人税等 | 200 | 未払法人税等 | 200 |
B社 | 法人税等 | 461 | 未払法人税等 | 461 |
C社 | 未収法人税等 | 440 | 法人税等 | 440 |
今回の内容とは関係ありませんが、実務上気になる点として、C社は赤字ですが、未収法人税等を計上しない(していない)ような気がします。
損益通算後の所得で法人税を計算
次に、3の損益通算後所得に税率をかけて法人税を計算しています。
内容 | A社 | B社 | C社 | 合計 |
---|---|---|---|---|
1、通算前所得 | 780 | 1,800 | (-1,720) | 860 |
2、損益通算 | (-520) | (-1,200) | 1,720 | 0 |
3、損益通算後所得 | 260 | 600 | 0 | 860 |
4、法人税率 | 23.20% | 23.20% | 23.20% | - |
5、法人税額 | 60 | 139 | 0 | 200 |
6、地方法人税率 | 10.30% | 10.30% | 10.30% | - |
7、地方法人税額 | 6 | 14 | 0 | 21 |
8、合計 | 67 | 154 | 0 | 220 |
8、合計の仕訳の次のとおりです。
法人名 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
A社 | 法人税等 | 67 | 未払法人税等 | 67 |
B社 | 法人税等 | 154 | 未払法人税等 | 154 |
C社 | 法人税等 | 0 | 未払法人税等 | 0 |
通算税効果額を精算しない場合
通算税効果額については任意のため、
精算しない場合は、8の仕訳についてのみ修正します。
通算税効果額の精算は任意ですが、8の仕訳は原則として必要です。
通算税効果額を精算する場合
通算税効果額を精算する場合の仕訳は次のとおりです。
法人名 | 借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|---|
A社 | 法人税等 (損金不算入) | 133 | 未払金 (通算税効果額) | 133 |
B社 | 法人税等 (損金不算入) | 307 | 未払金 (通算税効果額) | 307 |
C社 | 未収入金 (通算税効果額) | 440 | 法人税等 (益金不算入) | 440 |
A社は、損益通算により、国に支払う法人税が133減少しましたので、
C社に法人税相当額133を支払います。
B社は、損益通算により、国に支払う法人税が307減少しましたので、
C社に法人税相当額307を支払います。
C社は、損益通算により、自社の損金(欠損金額)が1720減少しましたので、
A社から法人税相当額133、B社から法人税相当額307を受け取ります。
(C社が損益通算前に未収法人税等を計上していない場合、
マイナスの法人税等440が追加で計上されることになります。)
違和感の原因?
規定だけ見ると、
通算税効果額を支払う場合は損金不算入、
通算税効果額を受け取る場合は益金不算入というのはわかりますが、
当初仕訳と通算税効果額の仕訳で、
辻褄は合うのか?と考えることがありました。
結論は、辻褄が合いません。
通算税効果額の精算に関係なく、当初仕訳を修正する必要があります。
(当初仕訳の修正は、通算税効果額の精算ではなく単なる修正仕訳です。)
A社の仕訳を並べてみます。
当初仕訳
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
法人税等 (損金不算入) | 200 | 未払法人税等 | 200 |
修正後の仕訳と通算税効果額の仕訳
借方科目 | 借方金額 | 貸方科目 | 貸方金額 |
---|---|---|---|
法人税等 (損金不算入) | 67 | 未払法人税等 | 67 |
法人税等 (損金不算入) | 133 | 未払金(通算税効果額) | 133 |
留意点
1、未払法人税等の修正は原則として通算税効果額の精算に関係なく必要です。
2、未収法人税等を計上していない場合は、マイナスの法人税が計上される場合があります。
3、法人税等の損金不算入の根拠規定は異なるため別々に加算調整します。
別表4と別表5(1)の動き
A社の別表4と別表5(1)の金額を左から右へ時系列に並べています。
別表4
内容 | 通算前 | 通算前に納税充当金設定 | 通算後 | 最終 |
---|---|---|---|---|
当期利益 | 780 | 580 | 580 | 580 |
損金計上 納税充当金 | 0 | 200 (加算留保) | 200 (加算留保) | 67 (加算留保) |
損金計上 通算税効果額 | 0 | 0 | 0 | 133 (加算留保) |
損益通算 | 0 | 0 | △520 (減算※) | △520 (減算※) |
課税所得 | 780 (留保780) | 780 (留保780) | 260 (留保780) | 260 (留保780) |
別表5(1)
内容 | 通算前 | 通算前に納税充当金設定 | 通算後 | 最終 |
---|---|---|---|---|
未払金(通算税効果額) | 0 | 0 | 0 | 133 |
繰越損益金 | 780 | 580 | 580 | 580 |
納税充当金 | 0 | 200 | 200 | 67 |
未納法人税 | 0 | △200 | △67 | △67 |
未払通算税効果額 | 0 | 0 | 0 | △133 |
差引合計額 | 780 | 580 | 713 | 580 |