今回は、相続があった場合の特例とインボイスの特例の判定順序を確認します。
結論は、インボイスの特例を先に判定します。
相続があった場合の特例
消費税を納める必要があるかどうかは、
事業を行っている本人(相続人)の
2年前の消費税のかかる売上高(注)で判定します。
注、基準期間における課税売上高といいます。
2年前の課税売上高が1000万円を超える場合は、
消費税を納める必要がありますが、
1000万円以下の場合は、原則として消費税を納める必要がありません。
ただし、相続があった場合の特例に該当する場合は、
事業を行っている本人(相続人)の
2年前の課税売上高が1000万円以下であっても、
消費税を納める必要があります。
仮に亡くなった方がインボイスの登録を受けていた場合と
受けていなかった場合で、取扱いが異なるのでしょうか?
判定の順番
1の相続特例と2のインボイス特例については、
2のインボイス特例を先に判定します。
1、相続があった場合の特例
相続があった場合の特例に該当する場合には、
事業を承継した相続人は相続があった日の翌日から
消費税を納める必要が生じます。
相続人が2人以上いる場合に、事業を承継する相続人が確定してないときは、
2年前の課税売上高を法定相続分で按分して、
相続があった場合の特例を判定することになります。
2、インボイスの特例
亡くなった方(被相続人)がインボイスの登録を受けている場合、
事業を承継した一定の相続人は、相続のあった日の翌日から一定期間、
被相続人の登録番号を引き継ぐため、消費税を納める必要が生じます。
事例
次の前提で確認します。
- 個人事業者Aの2年前の課税売上高が1500万円だった。
- Aは、X年7/1に亡くなった。
- Aの相続人はBとCの2人で、2人ともAの事業を引き継いだ。
- BとCは、事業を引き継ぐまで消費税に関する事業をしていなかった。
取扱いを確認します。
1、Aがインボイスの登録を受けていた場合
インボイス特例を先に判定します。
亡くなったAはインボイスの登録を受けているため、
BとCは相続があった日の翌日(X年7/2)以後、
一定期間(みなし登録期間)、消費税を納める必要があります。
1-2、Aの登録番号が失効した場合
Aの登録番号が失効した場合に、相続人B、Cが免税事業者に戻るときは、
相続があった場合の特例(下記2)の判定が必要と考えられます。
2、Aがインボイスの登録を受けていない場合
Aの2年前の課税売上高1500万円を法定相続分(仮に1/2ずつ)で
按分して判定します。1500万円×1/2=750万円≦1000万円となり、
BとCは相続があった場合の特例に該当しないため、
消費税を納める必要がありません。
判定順序のまとめ

1、相続人本人の状況で判定します。
本人について消費税の納める必要がない(赤色)場合、
被相続人の状況を確認します。
2、被相続人の状況で判定をします。
インボイスの登録をしている場合(黄色)は、
被相続人の課税売上高に関係なく、
原則として消費税を納める義務(登録番号)を引き継ぎます。
インボイスの登録をしていない場合は(緑色)は、
被相続人の課税売上高を基に、
消費税を納める必要があるかどうかを判定します。
参考規定など
国税庁、消費税の仕入税額控除制度における適格請求書等保存方式に関するQ&A、問16(相続)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/qa_01.htm
(小規模事業者に係る納税義務の免除)
消費税法、施行日令和5年10月1日
第九条 事業者のうち、その課税期間に係る基準期間における課税売上高が千万円以下である者(適格請求書発行事業者を除く。)については、第五条第一項の規定にかかわらず、その課税期間中に国内において行つた課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れにつき、消費税を納める義務を免除する。ただし、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。
(相続があつた場合の納税義務の免除の特例)
消費税法
第十条 その年において相続があつた場合において、その年の基準期間における課税売上高が千万円以下である相続人(第九条第四項の規定による届出書の提出により、又は前条第一項の規定により消費税を納める義務が免除されない相続人を除く。以下この項及び次項において同じ。)が、当該基準期間における課税売上高が千万円を超える被相続人の事業を承継したときは、当該相続人の当該相続のあつた日の翌日からその年十二月三十一日までの間における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、第九条第一項本文の規定は、適用しない。
2 その年の前年又は前々年において相続により被相続人の事業を承継した相続人のその年の基準期間における課税売上高が千万円以下である場合において、当該相続人の当該基準期間における課税売上高と当該相続に係る被相続人の当該基準期間における課税売上高との合計額が千万円を超えるときは、当該相続人のその年における課税資産の譲渡等及び特定課税仕入れについては、第九条第一項本文の規定は、適用しない。