棚卸資産の消費税の調整


今回は、棚卸資産の消費税の調整について確認します。

棚卸資産の調整の概要

消費税は、法人税や会計のように期間損益計算を行わず、棚卸資産を取得した時点で消費税の控除を行います。その後、棚卸資産を販売した時点で消費税の納税を行います。

棚卸資産を取得した年と棚卸資産を販売した年の納税義務の状況が同じであれば何も問題はありません。しかし、取得年が免税事業者、販売年が課税事業者など年によって納税義務の有無が異なると不都合が生じるため、一定の調整が設けられています。

免税事業者から課税事業者になった場合

棚卸資産の調整が必要な理由は次のケースです。

  • 免税事業者のときに棚卸資産1100(うち消費税100)を取得した。
  • 課税事業者のときに棚卸資産1320(うち消費税120)を販売した。

上記の場合、免税事業者のときに支払った消費税100は控除できません。しかし、課税事業者のときに預った消費税120を国に納付する必要があります。

預った消費税120-控除できる消費税0=納付する消費税120となり、支払った消費税が100あるにもかかわらず、取得年と販売年の納税義務の状況が異なるために、不都合が生じます。

この不都合を解消するために、棚卸資産の取得時が免税事業者、取得年度の次年度が課税事業者の場合は、棚卸資産の消費税の調整が認められています。

棚卸資産の消費税の調整額
1100円×10/110=100円を課税仕入れ等の税額とみなして、
消費税の控除ができるようになります。

消費税を調整する場合は、棚卸資産等の明細を記録した書類を保存する必要があり、この書類の保存がない場合は調整できません。

相続、合併、分割があった場合

例えば、免税事業者である父が亡くなり、課税事業者である子が父の事業承継して棚卸資産を引き継いだ場合です。

この場合は、免税事業者である子が支払った消費税ではないため、上記の規定が使えません。しかし、免税事業者である父が支払った消費税を課税事業者である子が支払った消費税とみなして、棚卸資産の消費税の調整が可能です。

この規定はあくまでも相続による棚卸資産の引き継ぎに限られるため、生前の事業承継の場合は使えません。相続等があった場合についても、棚卸資産等の明細を記録した書類を保存する必要があります。

課税事業者から免税事業者になった場合

棚卸資産の調整が必要な理由は次のケースです。

  • 課税事業者のときに棚卸資産1100(うち消費税100)を取得した。
  • 免税事業者のときに棚卸資産1320(うち消費税120)を販売した。

上記の場合、課税事業者のときに支払った消費税100は控除できます。しかし、免税事業者のときに預った消費税120は国に納付する必要がありません。

預った消費税0-控除できる消費税100=納付する消費税△100となり、預かった消費税が120あるにもかかわらず、取得年と販売年の納税義務の状況が異なるために、不都合が生じます。

この不都合を解消するために、棚卸資産の取得時が課税事業者、取得年度の次年度が免税事業者の場合は、棚卸資産の消費税を強制的に調整します。

棚卸資産の消費税の調整額
1320円×10/110=120円を課税仕入れ等の税額に含まないように調整します。

まとめ

取得した年、販売した年、調整の有無をまとめます。

取得した年
(消費税を支払った年)
販売した年
(消費税を預った年)
調整の有無
課税事業者課税事業者なし
課税事業者免税事業者減算調整あり
免税事業者免税事業者なし
免税事業者課税事業者加算調整あり
棚卸資産の調整規定のまとめ

相違点

内容免税事業者から
課税事業者
課税事業者から
免税事業者
消費税の取扱い免税事業者のときに支払った消費税を課税事業者のときに支払った消費税として、消費税控除する。課税事業者のときに支払った消費税を免税事業者のときに支払った消費税として、消費税控除しない。
事業者にとって有利不利
書類の保存必要
相続等があった場合の特例あり
棚卸資産の消費税の調整のまとめ

参考リンク
仕入税額控除の調整の概要
高額特定資産につき棚卸資産の消費税の調整を受けた場合の課税事業者の3年縛り

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