今回は、「棚卸資産の消費税の調整を受けた資産が高額特定資産だった場合の3年縛り」について確認します。
規定の内容
2つ前が、高額特定資産を取得した場合の納税義務の免除の特例。
1つ前が、棚卸資産の消費税の調整。
今回の内容が課税事業者の3年縛り。
それぞれの規定についてあまり関係なさそうな規定ですが、令和2年4月1日から、高額特定資産について棚卸資産の消費税の調整を受けた場合に、強制的に課税事業者となる特例(3年縛り)が設けられています。
3年縛りの要件は、次の2つです。
- 免税事業者のときに高額特定資産を取得した。
- 課税事業者のときに、上記の高額特定資産につき棚卸資産の消費税の調整を使用した。
棚卸資産の消費税の調整については、選択制度です。
3年縛りを避ける場合は、あえて選択しないことも可能です。
3年縛りの事例
例えば、次のケースで3年縛りとなります。
3月決算法人
令和4年5月6日
高額特定資産に該当する1億1000万円の棚卸資産を取得した。
令和5年3月期の納税義務
免税事業者であるため、支払った消費税1000万円について
消費税の控除ができなかった。
令和6年3月期の納税義務
課税事業者であるため、前期に支払った棚卸資産の消費税1000万円を
当期に支払ったものとみなして、消費税控除を計算した。
上記の場合、3年縛りとなります。
3年縛りとなる期間は、次の期間です。
これらの規定の適用を受けた課税期間の翌課税期間からこれらの規定の適用を受けた課税期間の初日以後三年を経過する日の属する課税期間までの各課税期間
分解して確認します。
規定 | あてはめると |
---|---|
これらの規定の適用を受けた | これらの規定は棚卸資産の消費税の調整規定です。相続等があった場合も調整規定に含まれます。 課税事業者から免税事業者になった場合は含まれません。 |
課税期間の | 令和5年4月1日から令和6年3月31日までの課税期間 |
翌課税期から | 令和6年4月1日から令和7年3月31日までの課税期間 |
これらの規定の適用を受けた課税期間の初日 | 令和5年4月1日 |
以後三年を経過する日 | 令和8年3月31日 |
の属する課税期間までの各課税期間 | 令和7年4月1日から令和8年3月31日までの各課税期間 |
整理しますと
令和5年3月期の納税義務
棚卸資産を取得したが、免税事業者のため消費税控除できません。
令和6年3月期の納税義務
免税事業者から課税事業者に変わったため、消費税の調整ができます。
この棚卸資産が高額特定資産に該当するため、3年縛りとなります。
令和7年3月期の納税義務
強制的に課税事業者となります。
令和8年3月期の納税義務
強制的に課税事業者となります。
令和9年3月期の納税義務
3年縛りの期間が過ぎているため、他の規定により納税義務を判定します。